■ 神奈川新英研5月春の1日研修会

2002年5月
'00年∥'01年'02年'03年'04年∥'05年'06年'07年∥'08年'09年 '10年 >>
3月4月5月9月
2002年5月18日 9:30~5:00
フォーラム横浜 ランドマークタワ13階 セミナールーム1にて 
参加者:20名

実践報告(高校):「会話・読解に生かせる中学・高校英文法指導の提案:5文型/Phrasal Verbsなど」

和田 さつきさん(元塾講師)

家庭教師に出かけたある日の出来事

 「家にリップクリーム忘れたから今日は学校で塗れなかったの」という中1の女の子。それを聞いて「クリームを塗る、って英語でなんて言うのかな」と考えた。「rubじゃ、ちょっと変、メンソレータムやタイガーバーム(balm)みたいなものは何がいいかな」と悩んで辞書と相談。
 ナルホド、服も靴も薬も化粧品も「つける」ものならput on。put on some creamだったか。そんなちいさな日々の文法的発見を積み重ね、神奈川の会報を担当している和田がレポートしました。

5文型は「青い鳥」だ!

 「5文型なんて…」と中学・高校の現場の先生方ができるかぎり軽く扱おうとする一方で、予備校や塾では5文型を信奉している。これだけ日本に流布している5文型、辞めるのではなく活用しましょう。私たちのそばにいる5文型こそ「青い鳥」。
偶然見つけた「山田英文法」。SV / SVC…の順番が不動と信じていましたが、イギリスの文法学者Quirkと同じでSV / SVO…で「自動詞/他動詞」からスタートする手法が日本でも実践されていたことを知り、レポートしました。
 5文型の陰に隠れてしまう表現をいくつか取り上げました。
 「この棒はナイフだ」This stick is a knife.を言い換えると…

  ……は……である 
(1) This stickisa knife.
  この棒は~であるナイフ
(2)  serves as 
機能する~として
(3)   can be used as 
使われる~として
(4) Youcan use this stick as 
  あなたはこの棒を使える~として


Phrasal Verbsの授業での扱い方

授業での導入のための発問例

  1. 「(部屋などに)『入る』、(部屋から)『出る』を何と言うか?」(get in / get out)
  2. 「『鍵を忘れた。入れない。』と英作文してみよう」(I've left my key; I can't get in.)
    enter the room(部屋に入る)、go into the room(部屋に入っていく)などの表現はすぐ分かる生徒も、意外とget in(入る)が思い浮かばない。Get out of here.
    (出ていけ/ずらかれ)からget outを引き出し、「outの反対の意味の副詞は?」と発問し、get inを引き出すと良い。get「~を得る」という他動詞としての意味が日本語で「ゲットする」というぐらい有名だが、自動詞としてのgetの用法に注目させることが動詞句を理解させるには必要。
     beとgetとhaveの意味が近いことを日本語を母語とする学習者には伝えたい。
  3. 「『忍び入る』『こっそり入る』『こそこそ入る』を何と言うか?」(sneak in)
    sneaker(スニーカー)という単語でなじみのあるsneak。「副詞を使って動詞を修飾する」と日本語を母語とした学習者が考えがちな表現を、英語では基本となるgetからシフトさせて、sneakという動詞で「音を立てずに」「こっそり」というニュアンスを表現している。また「こそこそ入る」など、日本語の擬態語に相応するのが、英語では副詞でなく「動詞」であることが多いと覚えておくのは英文小説を読解する上でも有効な視点だと思う。

参加者の感想

 とても興味深くお話を伺いました。数年前に話題に上がった(林野滋樹先生の)『楽しい英文法』に私が初めて出会ったとき(24~5年前)と同様の感動を覚えました。
教師になるまでは英文法は学年をいじめる道具くらいにしか思っていなかった私に「英文法は丸暗記するものではなく、意味のあるもの―それ以上のもの」であることを教えてくれたのが前掲の『楽しい英文法』でした。例文もガイコツのようなものでなく、豊かな内容のものです。いまだに折に触れて愛読しています。和田先生のお話を伺って、全て私の心の中に納得済みで、スッと内容が入ってきました。

5月の実践報告(中学): 「わかる、楽しい授業で学力保障をめざして! 外国語学習で「地球市民」に」

根岸 恒雄さん(熊谷市立熊谷東中)
◆ 校内・校外いずれの場でも忙しく活躍されている根岸先生。成果を手堅く形にする「技」をお持ちであり、かつパワフルに仕事をされている根岸先生の発する「気」と「情熱」が生徒の心に伝わり、英語が大好きな生徒がすくすく育っているようすが伝わってくる実践報告でした。

  • 意欲を支えるポイント制:
    約220ポイントの用紙を渡しておき、ポイントをもらったらマーカーを塗る。学期ごとに確認し、成績の参考にしている。
    用紙は地図に○印で双六のようにマス目をつくる[AETの出身国、2学期は東南アジア(スタートは台湾、中国、ベトナム、カンボジア、タイ、マレーシア、シンガポール、インドネシア、ブルネイ、フィリピンでゴール)、3学期は中東]
  • フォニックス:アブクド式でアルファベットの読み方を指導。発音[th / sh / ch / wh / ea…]の舌の位置など、入門期にやるからこそ生徒には新鮮で説明を真剣に聞いてまねようとする。
  • 「スマイル・インプット」(弾丸インプットを改称):ペア学習で一人が日本文を言って、もう一人が英文を言う。プリントの左に日本文、右に英文を書いた物を配布。
  • 復習インプット[覚えて欲しい表現を含んだ短い文]
  • 先回りインプット[授業の進度より先の2~3課まとめて基本文を口頭練習]

参加者の感想:

 私の実践とベースが似ているので、自分自身のやっていることへの自信になった。地に足のついた着実な実践が多い。生徒、英語への愛情がとてもよく感じられました。

講演:「絶対評価におけるテストづくり」

根岸 雅史さん(東京外語大助教授)
◆ 相対評価から絶対評価へ。このパラダイム転換に中学の現場は耐えられるのか。
選別のための評価ではなく、生徒を励ます評価でありたいと願うだけでなく、まずどう変わるのかを教員が説明できるだけの知識を持つことが必要です。制度としてどう違うのかの視点を的確に与えてくださる有益な講演でした。

相対評価から絶対評価への「パラダイムシフトのための10箇条」

  1. 指導目標は必須[何を指導するかはっきり]
  2. 到達目標は必須[どこまで到達するか設定]
  3. 評価は複眼化[テスト以外も評価に入れる]
  4. テスティングポイント明確に
  5. 総合問題は不可
  6. 直接的測定が必須
  7. 高い信頼性(reliability)が必要[同じテストで同じ結果を出す]
  8. テストの合計点は不要
  9. 「ごった煮採点」は無意味
    • 説明責任重い[その評価がついた理由を生徒に説明できる]
    • 評価の出し方、評価基準は学校ごとに決める/指導目標と到達目標の設定
    • 評価計画の作成:テスト以外の方法を用いるか[スピーチ、インタビュー、ポートフォリオ、学習ノートなど]

参加者の感想:

 重大な責任を負わされる教師たち。これから先、そのような責務に耐えられる教師が何人いるだろうか? むしろクラスサイズを小さくするとか、持ち時間を少なくするというような負担減を政府(文部科学省)が考えなければ、教師はやってられないだろう。

(2012年4月27日更新)