大英研10月例会[報告](大阪新英研/2025年)
10月19日(日)午後、たかつガーデン(大阪教育会館)で、「こんな授業が受けたい!」をテーマに大英研例会&懇親会を開催しました。参加者13名。
こんな授業が受けたい!
①【中学校】「導入や単元のまとめでのスピーキング活動の工夫」
久保田百合さん(豊中第一中学校)
郊外にあり半数以上の生徒たちが塾に行っている学校で、久保田さんはスピーキング活動を積極的に取り入れて英語を話す楽しさや伝わる喜びを感じられる授業をめざしています。導入の帯学習では、学んだ文法を使って3人1組のsmall talkに取り組みます。生徒たちは学んだ文法や表現を使って週末の過ごし方やニュースなどをテーマに楽しく交流します。
また、教科書にあるOur Projectを参考にしてSportsの魅力を伝えるポスターセッションに取り組ませました。生徒たちは得意なスポーツやニュースポーツを取り上げ、英語でわかりやすくルール解説を書き、レイアウトも工夫しました。ポスター掲示をお互いに評価し合い、分かり合えた喜びを感じてスポーツ愛も深まりました。
さらに、関西・大阪万博で開催されたEMO-1(English Manzai in Osaka)中学生の部にも豊中市代表として参加し、生徒たちはプロの指導を受けワードリスト・テンプレートを活用してネタをつくり、英語が得意でない生徒たちも一生懸命に取り組みました。7/30に代表が会場でパフォーマンスを披露し、英語とジェスチャーを交えて観客の爆笑を誘い、笑いは世界共通と実感しました。
②【高校】「生徒を“inspire and encourage”できる学習方法のいろいろ〜学んだ知識を無駄にさせない取り組み〜」
竹田和幸さん(大阪府立豊中高校能勢分校)
大阪府の最も北に位置するのどかな環境の府立高校で、竹田さんは英語6科目を楽しんで教えています。心がけているのは「なんで英語やるの?」という疑問に答えることです。中高生が英語を難しいと感じる理由として、リスニングはスピードや音のつながりに慣れないから。スピーキングは発声法が身に付いていないし、使う機会が少ないから。リーディングは語彙が多く覚えにくく、読書量が少なく、発音とスペリングが一致しないから。ライティングは文法が日本語と大きく違うから。
これらの解決策として、竹田さんは①スキーマ理論②転移③ワーキングメモリの負荷軽減④メタ認知と推論⑤エピソード(経験知)記憶と意味(知識)記憶の統合、など指導例をあげてくわしく説明されました。
また、最後に今の外国語教育の大きな問題は英語以外を選べないこと、詰め込みであること、予算の問題もあることなどと指摘されました。
③全体討議
最初に大学生から教育現場で生成AIがどう扱われているかに興味があり、様子がわかって良かったと感想がありました。参加者から生成AIの進化はハイスピードでうまく利用するのが重要との意見も出ましたが、他の参加者は学校や保護者としては生徒たちを守る意味で規制を考える必要もあるのではないかという指摘もされました。様々な問題実例も出され、生成AIとどう付き合っていくかが今後の教育の大きな課題だと意見一致しました。
生成AIにできない英語教員の役割として、良い文章をしっかり読みとらせ表現させて、人格を育てることがやはり重要であるという意見が出されました。そこで新英研が大切にしてきた教材及び読みとり、自己表現の値打ちも再確認されました。さらに来月のリーダーズ・シアターワークショップや教育のつどい大阪も紹介され、参加が呼びかけられました。
終了後、近くの居酒屋で懇親会も開催し、参加者から近況報告やビッグな夢をたくさん聞いて、おいしい料理とお酒でゆっくりと交流しました。
【参加者の感想】
「こんな授業を受けたい!というタイトルにふさわしい発表でした。子どもが通う学校は進学に特化した学習内容ばかりで感動する授業はないと思います。進学や入試はとても大切ですが、生きた学習、本当に大切な学び、というものは何か考えさせられました。
生成AIが広がってきている今、「何で英語やるの?」を改めて考える良い機会になりました。
久保田さんが日本人学校で勤務されていた経緯や生徒たちの学びや姿勢の違いについて、またいつか伺いたいです。
竹田さんが、先生方の悩んでおられることを改めて確認されることで、英語教師はどうあるべきか述べられたことは良かったです。