■ 授業に歌を

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第153回 What a Wonderful World この素晴らしき世界 (Louis Armstrong)

町田淳子(まちだ・じゅんこ 小学校テーマ別英語教育研究会)

問いかけよう自分に 素晴らしい世界はだれがつくるのか・・

 この本の読者でこの曲を聞いたことがない方はまずいないでしょう。世界中の様々な Musicianが歌い、演奏して親しんでいる曲の一つだと思います。きっと生徒もどこかで耳にしているに違いありません。
 サッチモこと、Louis Armstrong は、この曲を1967年、ベトナム戦争が激化しているただ中に発表しました。ですから人々は当然たずねます。「素晴らしい世界だなんて、どういうつもりだい?世界中のあちこちで戦争をしてることはどうだい、飢えや公害だってある。とても素晴らしいとは言えないよ。」すると彼は、そんなに悪いのは世界ではなくて、我々が行っていることが悪いのだと、こう答えるのです。
 “Seems to me, it ain't the world that's so bad, but what we're doing to it ... All I'm saying is see what a wonderful world it would be if only we'd give it a chance.”
 そしてその秘訣は愛情だと、あの大きな目をそれこそグリン(grin!)とさせた笑顔で言います。
 “Love! That's the secret! Yeah! If lots more of us loved each other, we'd solve lots more problems! And then this world would be better.” (1970年の録音で、前奏の間に語った言葉から)

授業の進め方

  1. まず、前置き無しに、できるだけ心を空っぽにして、歌に浸ってみようと促し、曲を流す。
  2. 聴いてみて、どんな気持ちがしたか、何かイメージが浮かんだか問いかける。
    I felt relaxed / happy / warm / easy / comfortable, etc. 
  3. どんな言葉が聴き取れたかをたずね、板書する。
  4. この曲を知っているか、どこの国の誰が歌っているかなど、生徒がすでにもっている情報を引き出しながら、この歌に関心をもたせていく。
  5. 次に、ワークシートAを配る。日本語訳と英語の歌詞の間の点線部分で折り、訳を見ないで再度歌を聴かせる。このとき、意味がわからない単語に下線を引きながら聴くよう促しておく。
    WorksheetA
  6. ワークシートを広げて日本語訳と対比させながら英文を読み合わせ、文意を確認していく。
  7. 内容が理解できたところで、作者は、この曲をどんな気持ちで書いたんだろうと問いかける。
    「何を見ても、すてきだと感じている。」「なんか幸福な気分になっているんだと思う。」といった声。
  8. ワークシートB
  9. 「では、作者がどんな人でどんな時代にこの歌を作ったか見てみよう。」とワークシートBを配る。辞書も使い、ペアで協力して内容を読み取らせる。チャレンジングだが大意をつかめればよしとする。あるいは、4つの部分に分けてあるので、協同学習の手法の一つ<ジグソー>(本誌10月号参照)を使い、担当を決めて読み取ると効果的だと思う。
  10. 読み終えた感想を発表しあう。
  11. そこで、ワークシートAに戻って、もう一度、歌を流し、今度は一緒に歌ってみる。
  12. 次に生徒自身に引きつけて考えさせたい。”What a wonderful world!” と言いたくなった体験はないか、思い出させ、あれば発表してもらう。
  13. 続いて、どんな時に(何を見たり、聴いたりすると)世界は素晴らしいと思えるか考え、書き出す。
  14. 何人かに考えを発表してもらい、感想も共有する。

まとめ

 ワークシートBの内容から、生徒は知ります。サッチモが、黒人差別の激しいアメリカ南部の貧しい家庭に生まれ、浮浪児や非行少年の矯正施設で楽器と出会い、炭坑で働きながら、練習を積んだこと。才能を開花させ有名になってからは、キング牧師らの公民権運動を経済的に支え、自ら人種問題を解決しようとしない政府への抵抗を行動で示しながら、人種や貧富の差を越えて、素晴らしい音楽と温かな人柄で万人の心を潤してきたこと。その名声にもかかわらず、生涯を労働者階級の人々の地域で暮らしたことなど・・。けれども、それは彼の人柄を表すエピソードのほんの一部であることを知らせておきたいと思います。そして最後に、なぜサッチモがベトナム戦争の最中に、この歌をつくったのだろうということを皆で考えます。「自分の住んでいる町が戦争になったら、こんな自然で普通のことができなくなると訴えている。」—そうだ、アメリカ本土では戦争をしていない—「そういう時代だったから余計に平和で素晴らしい世界を思い出させようとしているのかも。」等と話し合った後、始めに紹介したサッチモの言葉を生徒に伝え、もう一度、皆で歌いました。

資料

*リンク先はいずれも、別のウインドウ(またはタブ)で開かれます。

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ワークシートA ワークシートB


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