■ 神奈川新英研6月例会
2016年6月
■ 近況報告(悩み、取り組んでいること)
- 生徒の一つでも〇をふやすこと。
■ 最近うまくいかないこと、悩んでいること
- 授業。きちんと伝えること。静かにしてもらうこと。
●中学実践報告:「Letter Project with Korea 韓国の中学校との手紙のやりとりを通して」
大柿未来(みく)さん(平塚市立山城中学校)
1. はじめに
- レポーターから: 4年目にして初めて画一区の中学生とのお手紙交換を行いました。相手の学校は韓国の忠武女子中学校です。手紙を書いているときの子どもの様子や手紙を受け取ったときの子どもの様子お話ししたいと思います。
2. Letter Projectの流れ
- 日本の行事を英語で言うと…?
- 生徒にとっては改めて行事の意味を知る機会になった。
- Letter Projectの前段階として、新しい文法事項の学習後、その文法事項を使って3文書く練習を重ね、自己紹介文を書く活動を行った。自己紹介文を貼り出したところ、「えっ、あいつ、北海道生まれだったんだ」などの声があった。
- 下書きをしよう
- 「韓国人中学生に手紙を書こう!」と題して、以下を参考に下書きさせた。
- ①名前(I'm .)
- ②性別(I'm a boy / girl.)
- ③季節のイベント(We have イベント on 月.)
- ④イベントについて説明
- ⑤イベントに対して一言(ヒントを参照)
- ⑥相手に質問(ヒントを参照)
- ⑦締めの言葉(Truly yours)
例)Dear ○○
I'm △△.
We have Star Festival in July.
There are many kinds of stands on the festival.
I like them.
Do you have a similar festival?
Truly yours.
- 作文そのものはやや難しそうだったが、作業は楽しんでいた。
- 「韓国人中学生に手紙を書こう!」と題して、以下を参考に下書きさせた。
- 清書
- 返事を読んでみよう
例)
こんにちは。
Dear ○○
I'm △△.
I'm a girl.
We have a full moon Day in September.
On this day, we get money and eat many traditional foods.
Do you have a similar day?
さようなら。
Sincerely.
ありがとうございます。 ※Thanks for your letter.- 韓国語を勉強している生徒が、英文の最後に韓国語の文を添えたところ、その返信での反応がすばらしかった。たまたま好きなアイドルが同じということで盛り上がっていた。
- 最近の日韓関係を反映してか、韓国からの手紙は読みたくないという生徒もいた。
- 10月半ばに出した手紙への返信に返事を書く際には、子ども同士で助け合っていた。
- 続いて、クリスマスカードを送った。
- 韓国からはNew Year Cardが送られてきた。
3. 子どもの反応
- 2年生になり、「お手紙、今年はやらないの?」と聞いてくる生徒もいる。
4. 評価
- 表現および、関心・意欲の観点に加点した。
<参加者の感想>
- 中学生の書きの指導の方法。絵を描くのを可にすること。文法を教えたら、いくつか文章を作らせること。好きな話でどんどん英語を書いてみようということ。
- 棚谷さんの実践を更に進めているのではないかと思う点は、やはり行事についての説明を手紙の中に書かせているところだと思う。自己紹介ももちろん大切なのだけれど、それぞれの国の行事の共通点と違うところを考えさせてゆくところが面白かったです。それがとっかかりになって、あとは自分のことを述べ、相手に質問するという手紙の作り方はけっこうおもしろいと思いました。
- 日本の行事をテーマにした手紙交換を韓国の学校と取り組んでいく授業づくり、興味深く話を聞いていました。以前勤めていた学校では、韓国の高校生徒の交流を行っていました。年毎に日本に招いたり、また日本の高校生を引率して韓国を訪ねてました。
- 表現の機会、異文化理解の機会等、色々なことが含まれている授業だと感じました。返事をもらった後の子どもの反応が興味深かったです。ありがとうございました。
●高校実践報告:「再びGREAT PEACEMAKERS ~生徒は何を感じ、何を考えたか~」
倉本和晃さん(慶應義塾高等学校)
レポーターから:
- 3年振りに、高校1年生の授業で、世界各地で平和を築いた20人を紹介したGREAT PEACEMAKERSを使いました。プレゼンテーションやライティングを通して、この教材が生徒からどんなリアクションを引き出したかを皆様と共有したいと思います。
1. 勤務校について
- 学年18学級40名 1学年40人くらい帰国生がいる。少し推薦入試の生徒がいる。今日発表の授業は少人数クラスの選択授業で10数人いる。
2. 教材について
- 指導書のSTUDY QUIDE Questions がすばらしい。
- 『平和を作った世界の20人』(岩波ジュニア新書)として、浅川さんたちの訳本も出ている。
- 寄せ集め感がなく、テーマごとに繋がっている。5つのパートで構成されている。
- そこにいる人の背景、道のりを知らないといけない。
- イスラエル人とパレスチナ人がコミュニティを作ろうと提唱した人など、テキスト自体が言語教育のためのものではなく、深く掘り下げている。
- 発問の内容に深さを感じる。自分の今まではインフォメーションチェックが多かった。
3. 授業のしかた
- 章ごとにグループ3~4人に割り振る。生徒は
①サマリーをPPTを使ってプレゼンする。
→②リサーチプレゼンテーション[テキストで触れられていない部分を調べ、補完する]
→③ポスタープレゼンテーション[教室の四隅にプレゼンのコーナーを作り、他グループの生徒が順に見て回る] - ビデオで①、②、③の様子を紹介。すべて英語で行われている。
4. プレゼン時の生徒の活動
- プレゼンした内容についてディスカッションを行うが、なかなか意見が出ないので「プレゼンターからの質問」という形をとった。
- Worksheet ① general questions ② your reaction to the Peacemaker's word
- 教師が例示。Are human beings special creature? の指導書の質問に対し、「三世代にわたって共に暮らすこともできるので、経験を伝え、発展していくことが可能だろう」等。
5. 質疑・討議
- プレゼンの分担について― PPTを作ってくるのは宿題。ペアで1章ずつ分担するので、半期で3回くらい回ってくるクラスもあった。帰国生がプレゼンに慣れていた。日本人学校でよくやっていたようだ。
- ポスタープレゼンテ―ションは?―質問に対しての答えを ポスター係、マネージャー、ディスカッションホスト、プレゼンター 4隅にポスターをもって行き、ギャラリープレゼンテーション形式で担当していないポスターのところに行って、説明を聞く。
- 授業のまとめは?―「あなたが見つけたピースメーカー」「あなたが選んだピースメーカー」で新聞づくり。生徒から「ピースデストロイヤーではどうか? 」と要望が出て、安倍晋三について書いた生徒もいた。
6. 授業をしてみての感想
- ある一人の生徒の英文がすばらしい。わかりやすい英文をどうして書けるのか問うと、「書いたものを読んでわかるか。推敲する方法は、声に出してわかるかで、自分で引っかかるときは書き直す」
- 反省:いい教材を与えるといい反応が返ってくる。いい質問であるかどうかがカギ 生徒から持っているいいものを引き出す力が必要。もう少し基本情報、サマリーを生徒に提示してもよかった。もっと一般生徒に文章の書き方、作法を教えた方がよかった。
7. 質疑・応答
- 子どもたちがそれほどに惹き付けられるのはなぜでしょう?― 自分自身がさもしい心があることに気付く。常に自分の心をチェックする意味でも、見る価値がある。
- 訳者の一人として思うが、教員、警察官、軍人などに見せてトレーニングする必要があると思う。
- 全員が発言していないようですが?― 差がありすぎる。英語力の差というよりも、そのテーマに関心が持てない生徒が入ってこれない。
― 学校という現場で平和を考えることが目新しい。大阪で戦争、人権関連など20年やってきたが、今、教室で学ぶ重要なテーマだ。 - Ohio州のCleveland 修復的手法:裁判官が判決を出すときに被害者と加害者が話し合う場を持つ。
- 教材の並び順ですが、中高の教材はどうか。― 難易度別で言うと最後が一番難しいが… 三省堂のCROWNでは、そこまではない。三省堂の教科書を見ると、「日本人は素晴らしい」というメッセージが鼻につく。
- 意見:慶応で何をもって、手立てもなく読んで来いでプレゼンテーション、ディスカッションができるのだろう。大学生でもかなり限られるだろう。トップクラスの生徒だと思うが?
- 一般で入ってきた生徒で上級にいる生徒は少ないのか、多いのか? 中学の質問で事実確認に答えられるとポイントが取れる。長文読解で、上級クラスに入って価値観を問う質問をされても答えられないのではないか。内部からの生徒は答えられるのか?― 価値観を問う授業ばかりの先生もいる。
- 検定教科書を使っているはずだが、もともと慶応には入れる生徒はレベルが高いはずだが、ほかの英語プロパーの指導はどうなっているのか? 英語教員へのプレッシャーが非常に高くなると思う。―まったく教科担任に任せられていて、互いに授業を見合うこともない。
- 高校生がこういう想像力を持つということ自体が驚きである。ある教師が「教室から出ていけ」と言ったら本当に出ていったということがあった。想像力や考える力が衰えている。― できる生徒に合わせた授業展開で、上級にフォーカスを当ててしまったという反省がある。
― 他の生徒の考えを知れるいい機会になった。英語で授業を展開するという教師へのプレッシャーに関しては自分が地で行っている。 - 著者にこの授業の結果を届けたらいいと思う。
- 「外に打って出る」のがいいんじゃないですか。
<参加者の感想>
- 少し感じたことを書きます。たとえ、英語のレベルが高くなくとも、考えることが好きな生徒は英語が好きになるかもしれないと、私の経験から思いました。何かを伝えたい思いが、文章を書く思いになると思うので。先生の学校なら心配ないですが、私は考えたいので、英語を手段として使いたい方です。
- 討論の中であったように、かなり上級者向けであることは間違いないのですが、その中で「もっと勉強しなければ、このクラスにいられないぞ」という覚悟を下級者にもつけさせたいというように思いました。
- すばらしい英語表現の授業を見せていただき、また、お話を伺うことができ、うれしく思いました。また、倉本先生ご自身の言葉に、「私は生徒から教えられ、そして教えている立場だ」だと答えられていました。なんとすばらしい言葉だと拝聴しました。今日はありがとうございました。
- 授業の流れを詳しく紹介していただいて、イメージがつかみやすく、参考になりました。中学教科書でもマザー・テレサ(2年)やキング牧師(3年)があるので、中学の授業でも参考にできる部分はどこなのかを意識しながら聞かせていただきました。ありがとうございました。
- Great PeaceMakersを使った実践ということで、お伺いしました。自主教材として丸ごと取り組むのは他ではなかなかできないことでしょうが、是非成果を著者に届けるとよいと思います。生徒さんがコールマン・マッカーシーを評価しているのは意外ですが、平和への学びを求めているのだと思います。読解の授業ではなく、「どう思うか」を問う問いは生徒に学ぶ意欲を引き出すのだと思います。倉本さんところだからできるのかもしれませんが、「考える」授業づくりのヒントになりました。
●日時: |
2016年6月18日(土) 午後3:30~7:00 2:00 ~ 会員総会 3:20 ~ 受付開始 3:30 ~ 5:00 中学校レポート[担当:棚谷] 5:00 ~ 5:15 休憩 5:15 ~ 6:45 高校レポート[担当:萩原] 6:45 ~ 7:00 アンケート記入・事務連絡 |
●会場: |
大倉山記念館 第1集会室 (Tel. 045-544-1881) (東急東横線「大倉山」下車 徒歩5分 改札口を右に出て右折、急坂上る) |
●中学校 実践報告: |
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●高校 実践報告: |
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●会場費: | 500円(支部会員200円 学生200円) [当日会員登録(年会費2,000円)で割引適用] |
●問い合わせ: | 萩原一郎 *詳細情報:http://plazarakuten.co.jp/shineikenkngw/ *事前予約は不要です。当日、会場においで下さい。 |
★次回以降の例会予定:神奈川新英研HP
- ■7月例会 7月9日(土)大倉山記念館 第1集会室
- ●中学:岡田理沙さん(大和市立上和田中学校)
「生徒が英語を使うようにする工夫」
レポーターから:今までやった活動(主に文法定着のための活動)で、生徒が楽しそうにやっていたなあと思うものをご紹介します。
●高校:川村雅則さん(旭丘高等学校)
「被爆70年 戦後70年 8・9長崎平和祈念式典での谷口稜曄(すみてる)スピーチから~いつまでも戦後であってほしい~」
レポーターから:ナガサキ修学旅行を念頭に行った実践を振り返りながら、諸先生方からご意見等頂けたらありがたく思います。 - ■合同例会 10月15日(土)
- 講演:鳥飼玖美子さん
(2016年6月9日掲載/7月6日更新)