■ 神奈川新英研3月例会

2016年3月
<< '09年'10年'11年'12年'13年'14年'15年'16年'17年'18年 >>
2月3月4月5月6月7月9月10月11月12月

神奈川新英研3月例会報告


2016年3月12日(土) 大倉山記念館 第1集会室


●近況、最近取り組んでいること

  • 生徒にわかってもらえる授業のつくりかた
  • 放課後の居場所での英語活動のプログラムの実施

●授業でうまくいかないこと、悩んでいることなど

  • 授業の組み立て方

●授業でうまくいかないこと、悩んでいることなど

  • 生徒が単語を覚えられるようになる指導の仕方を知りたい。

●中学実践報告:内容読取りの育成を軸にした授業-読込み情報の整理を通して

加藤智行さん(東京都立八王子盲学校)

1. 自己紹介

  • レポーターから: 勤務校は幼、小、中、高普通科から職業課程のすべてを含む総合校。各学年英語科職員1名で、今年は2年生2名の担当。英語活動を活発にさせたいと思い、英語授業研究学会[英授研]に入った。年間10回授業をビデオに撮った。

2. 授業で心掛けていること

  • 指導事項の精選→繰り返しの指導(理解定着の深化)
  • スモールステップによる指導→ゆっくり、着実に

3. テーマ設定の理由

  • 中1…リスニング中心の指導 聞き取り力の向上により英語力の基礎固めをする。
  • 中2…リーディング中心の指導 スムーズに行うため、ポイントを精選して生徒に示す。

4. 授業実践

  • NEW HORIZON2 Unit 5
    本時の目標①新出語句や接続詞whenの意味を理解して本文を読解する ②新聞記事の英語から外国人住民への新しいサービスを読み取る。
     導入  13分
    ①買い物の対話を3時間使って1セットを目指し、作る→音読する→板書をノートに写す(1人は全盲で、点字で英文を打っている)
    ②リスニングCDの対話を聞き、最後の返答を予測する 
    ①②は完成したら2人で演じ、テストにも出題 
     展開 
    新出語の意味と発音チェック←辞書や携帯の辞書機能を使って意味調べ 
    本文CDを聴き、スモールステップの問いに答える 
    展開部分はワークシートに書き込んでいく 
    問5 They cannot get necessary information for their everyday lives.の英文はどんなことを言っているか、自分の考えと、そう言われている理由を考えて書き、意見を共有するようになっている。
  • NEW HORIZON 2 Let's Read 2 Try to Be the Only One 視覚障害のあるテノール歌手新垣勉を題材に扱っている
    初めてLet's Readを扱った。→背景知識の拡充と読み取りに視点を置きすぎた。視聴覚教材を活用してもよかった。28年度に再チャレンジする。
  • 定期考査の出題 
    国立に進学したい希望があり、難しくしている→教科書以外から15点。
    例:対話文を叙述文に書き換える。教科書内外の文を提示し、説明を求める。

5. 成果と課題

  • 生徒が安心して授業に参加している。
  • 考える、伝え合う、書いてまとめる。考える習慣が身についた。英検でも結果が出ている。

6. 質疑・討議

  1. 単語や文をリピートさせるか?-しつこいほど繰り返させる
  2. 絵を使わずにイメージを捉えさせるよう工夫していることは?-見えない生徒もいるので使っていない。英検等の絵を使う形式は困難だが、絵の状況を説明してやってテストした。そういう訓練が必要。
  3. テスト教科書内外の比率は?―15点分。学年ごとに比率を上げていきたい。
  4. どうしたらコミュニケーションが多い授業になるか?二人では難しい。
  5. 1年から2年になるにあたり、どういう活動をさせるつもりか?-ワークシートの方式が定着してきたので、宿題でライティングを出して表現活動の方向に。
  6. 生徒がどんな本を読みたいとか、自己表現させるのもいい。実際の市役所のサービスを調べて紹介するなどはどうか。
  7. 「道徳みたいになってしまった」と言うが、読み物リーディングで、「道徳になるから困る」とはあり得ない。

<参加者の感想>

  • ほとんど個人指導に近い一斉授業であり、視力の程度も全然違う2人に対して先生の声を通じて、指示を出したり、説明していくことは想像を絶するものがありました。点字を通して英文を見ている生徒と、板書が見える生徒とがどう交流しあうのか非常に難しいです。試験問題の妥当性について、もう少しおききしたかった。
  • 同じ盲学校の英語ということで、興味深く拝見いたしました。見えにくいということで読む速度が遅かったり、言葉や実物で状況や意味を理解しないといけないことから、授業が進むのに大変時間がかかります。その中で、その年度で、どこに力を入れて指導するかが伝わってくる内容でした。自分にとって、授業の様子を紹介していただけて参考になりました。先生方には、同じ盲学校の立場として授業の様子を見ていただけてよかったと思います。
  • とても丁寧な授業展開がいいなと思いました。ただ、新垣勉についてもう少し掘り下げるべきではないでしょうか。彼が生まれ育った戦後の沖縄の様子を知らせ、彼の歌を聴かせるなど考えられるのではないでしょうか。あと、もう一つ。「パパ・ヴァイト―ナチスに立ち向かった盲目の人」という絵本があります。加藤先生、教材化しませんか。
  • 勉強させていただきました。ありがとうございました。定期考査の自分 の作り方への問いを持つことができました。受験のレベルと教科書のレベルの差を感じています。(扱い方の問題ですが)
  • 盲学校での苦労は十分理解できませんが、生徒のことばに対する関心が 音から来る(入る)とすれば、先生の肉声がもっと使用されても良いかと思います。CDを操作する手間よりも対応しやすく、スピードや大きさを変えたり、関連する語句を追加もできるのではないでしょうか?
  • 生徒一人ひとりの個性、状況に合わせて、より効果的なご指導方法を考えていらっしゃる様子が伝わりました。文章問題の解答方法が「あなたはどう考えるか」という問いかけになっている所が良いなと思いまし た。答えが一つではなく、考えに自由度があり、又、相手の考えを聞いて、相手を尊重、理解しようとする気持ちを育むことができるのですね。本日は、ありがとうございました。



●高校実践報告:チャップリン独裁者のスピーチに向けた授業―全員が自分なりにがんばる英語の授業を目指して―

今田(こんた)健蔵さん(神奈川県立相原高等学校)

1. はじめに

  • レポーターから:大学院修士課程で久保野雅史さんが指導教官。私立の非常勤講師を経て、相原高校で2年目が終わる。現在畜産科学科2年の担任で、授業は2,3年16時間。2年の最後にやったスピーチ指導を、映像をまず見てもらい、後から発表に至るまでの過程を話していく予定。[以下視聴と質疑・討議は交互に行われる]

2. 映像視聴と指導手順

  • 『独裁者』スピーチに至るまでの指導
  • ○グループで取り組ませる 分担の仕方は自由 Part1、Part2からどちらか選ぶ
  • ◆あるクラス、7グループの発表をビデオで見る[すべてPart2を選んでいる]   Soldiers! Don't give yourselves to these brutes who despise you, who enslave you, who regiment your lives, and who tell you what to do and what to think and what to feel, who treat you like cattle and use you as cannon fodder.から
      Soldiers! In the name of democracy, let us all unite! に至る部分
  • ◆〈Part1,Part2理解のためのプリント〉の説明 指導案の網がけの部分の映像
    • Do you have white paper? 持ち物の確認から入る 英語で語りかける 
    • チャンツで黒板に貼った6種類の完了形の文を教師の手拍子で読む、2回目速く
    • チャップリンのメッセージにマッチングする写真(ABCDEF)←Google画像から選んでおいたものを教師の説明から選ぶ
    例:Part2の冒頭の1文にマッチする画像
      →兵士が上官にしごき(?)を受け、腕立て伏せしている写真
    • 写真の説明を簡単な英文でしておいて、のちにペアで話し合って選ばせる
    • ポイントは正解することではなく、何度も英文を読んで隣とやりとりすること
  • ◆スピーチに入る前に行った音読テスト 絵と英文をペアで「文字読む人」「聞きながら指示やジェスチャーをする人」 教科書の4ページから選ばせてテスト 録画する「みんなの前じゃないからよかった」隣の部屋で行う。

3. 質疑・討議

  1. 生徒のアンケート「やりたくない」「あまり」が多いのでどうしたものか-「まあまあ」も好きのうち
  2. よくできているのでどんな指導をしたのか?―リズム、連結など特に意識して教えてこなかったがこの取り組みで5コマくらい練習した。チャンツを使って慣らした。LINEでペア同士練習をしていたようだ。
  3. 確かに3番目の男子がチャップリンの話し方に似ていた。なかなか単語そのものが難しいのに自分の声に出させるのに苦労したのではないか?―理解に入る前に、チャップリンのスピーチを見せている。チャップリンクイズをしてから、映画を見せ、文字音声に入った。
  4. Chaplin Quiz 1.Which is Chaplin's face? 2. Chaplin knows about one Japanese person. Who is it? 3. Chaplin made the famous movie called "独裁者". But, what year? It started in… A. in 1947[アンネの日記発行]B. in 1940[日独伊三国同盟]C. in 1945[アウシュビッツ強制収容所解放]
  5. スピーチをしているCMがあるそうだが…―転職サイトのCMが映画の一部を使っていた。生徒たちに映像を見せたら、チャップリンのスピーチはかっこいいと言っている。
  6. 今回の発表は今年になってからの取り組みだが、生徒が新鮮と言っているが昨年はやっていたのか?―音読テストは前にもやっていたが、リードアンドルックアップやペアでやったのは初めて
  7. 本人の思い、素材としては古いのにあえてこれを選んだのはなぜ?―1年はスピーチコンテスト「大切にしているもの」をやり、2年でチャップリンのスピーチ
  8. 内容がないと生徒は興味を示さない。大学時、教職教養で知った自分が面白いと思える内容だから
  9. Part1も同じ内容理解を使ったか?―違ったので戸惑ったようだ
  10. ペアで分担したが、これからもやってみたいと言わせるなど、自然に協力を作り上げたのが上手だ
  11. 決して古くない話題だろう ちょっと広げすぎているかも。私だったらPart2だけにして、もっと練習させる。失敗せず満足できるような達成感を生徒に残してやるのが、今後につながるだろう。

<参加者の感想>

  • あまりにも有名な『独裁者』のスピーチですが、高校生たちが一度映画でその場面を見て、「かっこいい」と感じ、自分たちもそのようにメッセージを伝えようとがんばったことが素晴らしい。やはり、人間が大事にされていない今の政治や社会の状況への憤りを高校生も持ったのか? 'soldiers!' という呼びかけの繰り返し部分、どのグループも強調していて、もっと練習時間があればさらに良いものになったでしょう。
  • チャップリンの読み物を題材について工夫された内容だと思いました。それぞれのグループで自由に考えて発表できる「自由さ」を与えた中での発表は表現力・発信力の育成に繋がるものだと思います。マッチングをしながら内容理解をするというのも新鮮でした。参考にさせていただきたいと思います。
  • チャップリンのメッセージ6つに写真(ABCDEF)をマッチングさせる活動が秀逸! 結びつきのあいまいさが学びを深めることになるっていうところが最高!
  • 遅刻してきたのでわかりきれていません。本当に申し訳ありません。70年くらい前の題材を今の生徒たちに伝える課題を私自身も日々感じ、悩んでいます。生徒がすらすら英語を話されていて、高校生はすごいなと思いました。先生の言葉のあまり読めないということが生徒の様子からはあまりわかりませんでした。 貴重な報告ありがとうございました。
  • 少ない練習時間の割にはスピーチはよくできているグループ があった。もう少し練習時間(期間)をとってあげると、レベルがあがり、自信をつけた生徒が多くなっていたと思います。ペアによる音読発表もジェスチャーと息の合ったペアが多くよくできていました。(交代で2ラウンドさせてみるのも良いかな?) 年に一回は発表のイベントを入れたいということで(?)、My Treasureを1年でやり、今回2年で暗唱(グループで分割発表OK)ときているので、3年生でも何か1つ入れていくのでしょう。また話を聞かせて下さい。



●日時: 2016年3月12日(土) 午後3:30~7:00

3:20 ~ 受付開始
3:30 ~ 5:00 中学校レポート [担当:関口]
5:00 ~ 5:15 休憩
5:15 ~ 6:45 高校レポート [担当:棚谷]
6:45 ~ 7:00 アンケート記入・事務連絡
●会場: 大倉山記念館 第1集会室 (Tel. 045-544-1881)
(東急東横線「大倉山」下車 徒歩5分
 改札口を右に出て右折、急坂上る)

より大きな地図で 大倉山記念館までのルート を表示
●高校 
実践報告:
「チャップリン独裁者のスピーチに向けた指導―全員が自分なりにがんばる英語の授業を目指して―」
今田 健蔵さん(神奈川県立相原高校)
レポーターから:
 高校1年生から継続して指導している高校2年生の授業を見ていただきます。1年次にはスピーチコンテストを行いました。2年次のビッグイベントとして、すこし変わった形でのスピーチを行う予定です。なので、スピーチ当日の様子もお伝えしようと思います。やること全てが初めての取り組みですので、フロアの方々からのご助言、情報交換等ができたらと思います。
●中学校 
実践報告:
「内容読取りの育成を軸にした授業 ~読込み情報の整理を通して」
加藤 智行さん(東京都八王子盲学校)
レポーターから:
 視覚障害のあるために、多種多様でかつ複雑な情報を瞬時に読み解くことは困難を伴う。しかし、読み取るべき内容をあらかじめ情報の整理をすることで生徒は確実に本文内容を確実に理解することができる。本発表では、本校中学部2年生における授業実践の取り組みを紹介する。
●会場費: 500円(支部会員200円 学生200円)
[当日会員登録(年会費2000円)で割引適用]
●問い合わせ: 萩原一郎 クリックするとメーラが開きます。

PAGE TOP

(2016年3月19日掲載/3月26日更新)