■ 神奈川新英研3月例会
2015年3月
●近況,最近取り組んでいること
- 音読を通して部活動に多忙な生徒を、いかに授業中に「定着させるか」ということをテーマに考えてます。
- 中学英語の指導法研究
- 大学受験の勉強(高3、高2[特進科担当のため])
●授業でうまくいかないこと、悩んでいることなど
- 独創的なことができない。
- 生徒の頭の中に何を残すか。
- 生徒が辞書を引かない / もっていないこと
- 提出すれば成績が良くなると思う生徒が多いこと
●中学実践報告:『受験前の3年生の指導 ~ここ2年間で工夫したこと~』
榎本美津子さん(横浜市立中和田中学校)
1. はじめに
- レポーターから:
リスニング演習にFreedom Writers,「アナと雪の女王」の映画の一部を使ったり、基本の単語や文型を徹底練習したりの実践を紹介します。 - 進路指導主任で10年ほどずっと3年生を担当していた榎本さんがいつも悩んでいたのが、教科書を終えてからの授業をどのように展開していくかということ。進路成績が出たあとで、学習目標がぼやけてくる時期。推薦で決まった生徒や、学習に自信が持てない生徒、入試にきちんと向き合えない生徒など様々。あくまでも基本的なところでつまずいている生徒に焦点をあてながら、何とかどの生徒にも学習する意義を感じさせられるようにと工夫した活動(約6時間分)を紹介していただきました。
2. 授業
- 平成25年度の取り組み
- ①リスニングとして、映画 Freedom Writersのdictation を行った。年末に映画全体を見せておいて、一部を見せてセリフの空いたところを書かせた。その後、公立高等学校の過去のリスニングの一部をやった。
- ②公立高等学校の過去の問題を最初からそのままやらせるのではなく、空所補充、並び替え等、問題別に年度ごと集めたのを取り組ませた。
- ③三友社出版「中学校の総仕上げ 英語」からプリントして文法別に行った。
- 平成26年度の取り組み
- ①リスニングとして、映画 Frozenのdictationをやった。全体は見せず、一部を見せてセリフの空いた所を書かせた。その後、市販のリスニングをやった。
- ②三友社出版「中学校の総仕上げ 英語」からプリントして文法別に行った。
- ③時間が余った生徒は、持参の問題集をやって自習してよいことにした。
3. 授業と生徒の成果
- 大まかな時間の使い方(2年間共通)
時間 活動 10min Greeting
Singing a song
Spelling Test20min Listening 20min Worksheet、Giving answers - 生徒の様子と成果
- 単語テスト
- やや簡単すぎたという感があったが、1~2年の復習をしたいという希望の生徒が多かったので、思いの強い生徒は真剣に取り組んでいた。
- 推薦で入学が決定していた英語がかなりきびしい生徒も自分も参加出来ると思ったのか、良くやっていた。
- リスニング
- Freedom Writersは最初自信がなさそうだったが、聞き取りやすい個所であったので、興味深く取り組んでいた。難しい個所は、トップ校と思われる学校を目指している生徒が、興味深く取り組んでいた。ただ回が進むにつれ、難易度が増してくるので、トップの生徒の独壇場になる傾向があった。
- Frozenは、歌を扱ったことがあり、ほとんどの生徒が見ていた映画で、全体を見せる時間的余裕もなく、そのまま取り組んだが、どの生徒もとてもよく取り組んでいた。
- プリント
- やはりこの時期でもあるので、取り組む時間と意欲は様々であった。7~8分でさっと終了させて自前のプリントに取り組む生徒、ゆっくり時間をかけて最後まで終わらせる生徒、周囲に聞きながらやっと取り組むが今後の学習に不安が残る生徒など。
*参加者も両方のdictationにチャレンジしてみました。Freedom Writersは最初の文字が入っていてヒントになっていたり、Frozenは会話のやりとりで推測がつきやすい場面が選んであり、生徒たちにとって自信につながったというのが実感できました。つい入試問題の過去問題に取り組ませてやり過ごしがちな時期を、authenticな教材を利用して工夫した素晴らしい取り組みでした。
- やはりこの時期でもあるので、取り組む時間と意欲は様々であった。7~8分でさっと終了させて自前のプリントに取り組む生徒、ゆっくり時間をかけて最後まで終わらせる生徒、周囲に聞きながらやっと取り組むが今後の学習に不安が残る生徒など。
- 単語テスト
<参加者の感想>
- 生徒の興味を引かせるような映像教材をいくつかご紹介していただいたので、自分で調査の後、授業に還元していきたいと思いました。
- 中学生を10年余指導していましたが、VHSを使って指導することができず、心残りなものがあります。中学に戻る-モードを切り換えるのに少し時間がかかると思うが-参考にさせていただきます。
- 入試前の授業のご苦労がよくわかりました。大変すばらしい実践でした。
- 中学のテキストに映画があればいいですが、少なくても何か流行のものか、名画の一つを紹介を兼ねてとり上げたいですね(アナ雪Frozen もその1つです)。
- ディクテーションは誰でもとりくめる場面を入れると効果的ですね。
- 単なる練習問題も入試前は「やり直し」時期で、ヤル気をもつ子が多くなるので適度に入れるといいのかなと思いました。
- 入試前のとても有効なとりくみを紹介していただいてだいぶ参考になりました。選択英語で映画を扱っていた頃や、教科書にFree WillyやFly Away Homeなど良質の映画がとり上げられていた頃がなつかしいです。私も榎本さんのように上手に活用してみたいと思いました。
- 受験前は、単語と過去問と映像の授業という点に賛成です。私もそうです。
●高校実践報告:
「英語学習への動機づけを考える ~定時制高校と進学校での調査分析を通して~」
小金丸 倫隆さん(神奈川県立光陵高等学校)
1. はじめに
- レポーターから:
生徒を英語学習に動機づけるためには、まず生徒が何によって英語学習に動機づけられているのか(もしくは動機づけられていないのか)という現状把握が重要だと思われます。今回は定時制高校と進学校という2種類の学校で行ったアンケート調査の結果をもとに、英語学習への動機づけについて考えていきます。 - (私学に勤務後)大和西高校5年→厚木清南:定時制3年→光陵1年
2. 授業
- (あ)「英語学習への動機づけ」の理論的背景
Gardner(1985年)の動機づけ概念- 「統合的動機づけ」・・・目標言語話者の文化や言語を理解してその文化に親しむ態度を基礎とした動機づけ (例):英語の音やコミュニケーションが面白いと思う
- 「道具的動機づけ」・・・よりよい仕事や学歴の取得などの実用的な目的を基礎とした動機づけ (例)入試の受験科目として、外国人との接触でその思考方法に関心がある
- Deci &Ryan(2002年)の「自己決定論」が今注目されている
学習者の内発的動機づけが高まる前提条件は
(1)Autonomy自律性の欲求の充足・・・聴きたい、会話したい
(2)Competence有用性の欲求の充足・・・~ができた、わかった
(3)Relatedness関係性の欲求の充足・・・人や文化との接触が好き
- (い)定時制の生徒の現状・・・「これまでの英語学習でつまずきを経験、基礎的な英語知識が不十分、英語学習に対して苦手意識をもつ」 → 英語学習に関して抱いている学習観(belief)が英語学習への動機づけに影響を与える要因の1つではないか。
- Beliefとは?
Horwitz(1988) 真実でない場合もあり、先入観、神話になっているものもある。 Kern(1995) 不満、不安、動機の欠如などの原因を探るためbeliefを抽出、研究 Arao(2004) 学習体験や努力の成果に基づいているbeliefを研究、自己決定の度合いに影響していることを明らかにしている。 - 鈴木栄(2012)英語に対する興味や自信など英語学習に有益なbeliefの多くが内発的動機づけや融和志向的な動機づけに関連しうることがわかった。
- Beliefとは?
- (う)学習観と動機づけの調査Ⅰ:定時制高校148名、調査方法「質問によるアンケート」①BALLI (Horitz1988)、②英語学習への動機づけの調査(廣森:明治大学2006)
●結果- 日本語使用志向と英語によるコミュニケーション志向が高い
- 従来の英語授業への信頼と自己効力感(英語への自信)が低い
- 英語授業で日本語を使用した文法指導を行うだけでは自律性の高い動機付けには結びつきにくい
- (え)学習館観と動機づけの調査Ⅱ:進学校175名、調査方法 (う)に同じ
●結果- 英語によるコミュニケーション志向と文法学習・大学受験志向が高い
- 日本語使用志向も高い
- 自己効力感(英語への自信)と学校の英語授業への信頼は低い
- (お)両調査のまとめ
- 英語への自信の高低は学力の高低につながらない
- コミュニケーションまで行かないと動機づけは高まらない
- 英語学習への内発的・自律的な動機づけは英語によるコミュニケーションに対する肯定的な学習観(belief)が高いか低いかによって決まる。
- 小金丸さんは現在CLIL(Content and Language Integrated Learning:内容言語統合型学習)や日本アクション・リサーチ・ネットワーク(jeARn)などに加入して活動を進めています。
- *CLILの4つのContent内容 Communication言語 Cognition思考, Community or Culture協学
<参加者の感想>
- 英語学習の動機づけはとても役に立ちました。「コミュニケーション活動」に賛同していない」教員に対し、どのように説得(?)していくかという部分でとても参考になりました。日本語使用志向がどのように生徒を動機づけているか(実際△ですが…)納得するところも多く、今後のよい指針になりました。久々に参加しましたが、とても有意義でした。ありがとうございました。
- 時代こそ違え、私も偏差値の出にくいトラブルメーカーや不登校経験者の多い学校に10年務めた経験が有り、その後、上流階級の住む中学校で教えていた時に、そのギャップにはとても驚かされた経験があります。先生の「生徒はどこでも同じ」という発言に私も同感します。データもさっそく活用します。これからも先生のレポートを楽しみにしています。
- 忙しい中、よくこれだけの研究を実践できたことと思います。ぜひ進学校での生徒にも、使える英語力をつけさせて下さい。また、進学校での今後の後研究の発表も楽しみにしております。
- 動機づけでみる生徒のアンケート結果は大きく(昔と)変わっていないと思いました。「コミュニケーションツールとして習いたい、自信をつけたい」と願っているはず。入試だけを目標とするだけでなく、入試も含みトピックをいろいろ学びながら、総合的言語力をつけることが目標になっていいと思う。後に残る英文、自分の作った英文を発表できるような場をつくれれば良いと思う。
- とても興味深いデータを提供して下さって、面白かったです。やはり、きちんとデータをとって分析したうえで、とりくみを工夫していくことが大切だと感じました。
- 工業高校機械科の出身です。当時、工業高校には大学に進学する生徒は殆どいませんでしたので、教員は教科書は放ったらかしで色々な自主教材を持ち込んでいました。3年の時、工場実習で使う工具や機械の名前を英語で列挙したプリントが配られました。平ヤスリとか半丸ヤスリ、定盤、計算尺、バイト、旋盤、フライス盤、砂石けん、治具等々です。普段、英語の授業はテキトーだった連中が食いつきましたね。工場実習の授業は4時間連続で行われますが、これらの英単語を使った英会話がしばらく勝手に流行りました。
- A: I want a bite.
- B: What bite you want?
- A: Ah, 突っ切り bite.
- B: I'm sorry. We don't have 突っ切り now. I think Kimura is using 突っ切り now.
- A: Okay, I ask. Thank you.
- B: You are welcome.
- A: Kimura, Kaneda said you are using 突っ切り。 I want to use.
- C: Sure, but wait a minute. I finish this.
- A: Okay.
●日時: |
2015年3月7日(土) 午後3:30~7:00 3:20 ~ 受付開始 3:30 ~ 5:00 中学レポート [担当:棚谷] 5:00 ~ 5:15 休憩 5:15 ~ 6:45 高校レポート [担当:萩原] 6:45 ~ 7:00 アンケート記入・事務連絡 |
●会場: |
★会場がいつもと異なりますのでご注意を! 横浜市技能文化会館 会議室701(7階) TEL 045-681-6551 〒231-8575 横浜市中区万代町2丁目4番地7 関内駅徒歩5分(関内駅南口の改札を出て右へ進んで下さい) より大きな地図で 横浜市技能文化会館 を表示
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●会場費: | 500円(支部会員200円 学生200円) [当日会員登録(年会費2000円)で割引適用] |
●中学実践報告: | 「受験前の中学3年生の指導」 榎本美津子さん(横浜市立中和田中学校)
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●高校実践報告: |
「英語学習への動機づけを考える ~定時制高校と進学校での調査分析を通して~」 小金丸 倫隆さん(神奈川県立光陵高等学校)
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●お問い合わせ: | 萩原一郎 |
★次回以降の例会予定:神奈川新英研HP
(2015年2月22日掲載/4月16日更新)