■ 神奈川新英研2月例会
2014年2月
2014年2月15日(土)
●近況,最近取り組んでいること
- 高1から持ち上がってきた生徒が今年高3になります。受験対応の必要性を感じていますが、それだけに終わらない指導をしたいとおもいます。
- 多読の研究、accuracy→fluencyへ。
- 音読
- イントロ作り
- 大学院のコースプロジェクト等、複数の論文原稿を抱えて、タイムマネージメントの必要性を感じています。
- 英作文を前よりもさせるようにしていますが、あまり効果はありません。
●授業でうまくいかないこと、悩んでいることなど
- 英語がイヤになってしまっている子たちを授業に巻き込んでいくにはどうすればよいかなとかんがえています。
- 深める活動をどうつくり、どう全体の中に入れていくか。
- どのように生徒のmotivationを高めるか
- ただ単に暗唱させるだけだと生徒のモチベーションが下がってしまうこと。
- 文法が定着しない。授業を楽しめない。
中学実践報告:「『モジュール式 英語の基礎』をやってみる」
泉 康夫さん(川崎市立御幸中学校)
(報告まとめ:泉さん)
泉さん
レポーターから 広島市ではここ数年、市内全中学校が「ひろしま型カリキュラム」と呼ばれる市の方策を受け、「中学校全学年、英語の授業の中に1回当たり10分程度のモジュール的な繰り返し学習を行う時間を設定する」という指導が行われています。これは広島修道大学・山田雄一郎教授が中学生用に開発した教材で、私自身は帯学習の観点からも「変化あるくり返し」の観点からも既習文法事項の復習にピッタシだと感じています。発表では実際に体験して頂き、互いに意見を交わすことができたらと思います。
1.はじめに
- 広島市ではここ数年、市内全中学校が「ひろしま型カリキュラム」と呼ばれる市の方策を受け、「中学校全学年、英語の授業の中に1回当たり10分程度のモジュール的な繰り返し学習を行う時間を設定する」という指導が行われています。何校か、その年間指導計画を覗いてみましょう。
- 繰り返し学習教材を使い、週に3回程度授業開始時にドリルを行う:亀山中
- モジュール学習による反復練習で総合的な英語力を養う:五日市南中
- 各英語の授業の中で、「ひろしま型カリキュラム」による10分程度の既習事項復習を取り入れます:白木中
- 今年度はひろしま型カリキュラムの実践研究校の指定を受け、各授業の中で10分程度の既習事項の反復練習 を行います:安佐中
- 毎時間、授業の始めに10分間既習文法の復習を行い、基礎基本の定着を図る:井口中
- モジュールの時間を使って、繰り返し学習により文法を身につける:観音中
2.現場では
- 『モジュール式 英語の基礎』の本は、市内の全中学校に昨年度英語教員人数+α冊分配布されました。また、 広島市内では毎時間授業の最初に帯時間でやるテキストが全学校全生徒に配布されています。山田先生が最初に関わっていると聞きました。モジュールの考え方を使われています。ただ、内容はと言うと、大変味気ないものです。
- 山田先生の本は教員用に参考のものとして配布されました。おそらく、広島市で300冊位は配布しているはず です。生徒に配布しているのは、山田先生のモジュールの概念をもとに広島の中学校の教員が編集した繰り返 し学習のもので、毎授業10分でやることになっています。私も何度かやってみましたが、継続できていません。一つには、強制的に上から降りてきたことに対する不満があったのかもしれません。
- 否定的な意見もある「モジュール的な繰り返し学習」ですが、小学校への英語導入には必ずしも賛成ではない広島修道大学・山田雄一郎教授が中学生用に開発した教材と知り、私自身は興味を持ちました。
- 以下、『「英語が使える日本人」は育つのか?』(岩波書店)から引用:
50分かけてやっていた教科書中心の授業を手際よく40分くらいですませる。そうして確保した10分 では、ドリル型の教材を用いる。それだけでも中学の3年間でかなりの英語力を育てることができるようなすぐれた教材を用意するつもりです。この方法だと、新しい教授法で新しいことをやれというわけではありませんから、どんな先生でも対応できるのではないでしょうか。
3.モジュール式ディクテーションの進め方
- 未習語はあらかじめ発音させ、意味を確認する。
- テープを通しで連続2回聴かせ、答え(分からない単語は勘で)を記入させる。
- 簡単なものは教師が答えを板書するが、それ以外については答えさせる。言えたらカボチャの芽(ご褒美)。書き間違えやすい語についてはスペリングも問い、正答ならカボチャの芽。
4.おわりに
- 従来からのプリントによる復習に「変化あるくり返し」感覚でオーバーラップすることができ、大変重宝です。
- 習ったことを忘れかけた頃に復習することで、定着率UPが期待できます。
- ディクテーションをやっている間、生徒はクール・ダウンしますから教員はラクチンです。
- 「毎時間」「授業の最初に」「10分程度」など、広島市でのトップダウンのやり方については疑問です。
みなさんの意見、感想
- 変わらず泉先生らしくエネルギッシュで元気を頂きました。色々と工夫を続けておられる姿勢に何より刺激を受けました。先生のように情熱のたえない教師でありたいなと思いました。有難うございました。
- 本日は有難うございました!特に初級者については勉強の仕方がわからないために復習の習慣が作れず、徐々に沈んでいくということが見受けられますが、授業内でそれを示すことができればより生徒を巻き込んでいけるのではないかと思います。モジュールの方式を取っていくと、トレーニングの目的と内容が明確になるのでよいなあと思いました。
- 先生の授業全体を受けてみたいです(ワークショップ的に50分)。家庭学習なしで、授業だけで教科書はカバーできるメソッドではと思いました。塾に行かなくても、しっかりやれば大丈夫だという印象を持たせていただきました。次回は、「深める」(心を動かす)授業を発表して、伝承してください。
- お話の中であった「授業崩壊」の時、わたしたち教員の生き方を教えられた思いがしました。ありがとうございました。
- 帯学習をやることにより、生徒にあきさせない事、そしてシールや外国のコインで生徒をほめるということ、このような子どもっぽい事で生徒たちを集中させているんだと感心した。ただ、この活動をするために教員側の準備は大変だと思う。誰にでもやれる事ではないと思うが、本当に授業が成り立たなくて困っている人はまねをしたほうが良いかも。
- 帯学習と言う考え方には非常に興味があります。「変化あるくり返し」と基本的に復習事項を扱うという点で勉強になりました。
- 文をただリピートさせるだけでなく書かせること。海外のコインが人気だということで集めてみます。ALTと日本人教師の役割分担をしてみます。
高校実践報告:「アウトプット・大学入試を見据えた活動的な高校リーディング授業 ―外国人の誤解を招く恐れのある、日本人の何気ない行動・ジェスチャーを語ることができる授業― 」
早野 香さん(鎌倉学園中学校高等学校)
はじめに
レポーターから:高校1年後半~高校2年の教材としてアルク刊『アクティブリーディング』を使用し、アウトプットまたは大学入試を見据えた授業をご覧いただきます。文化の違いに関する内容の教材を通して『対比』の論理展開を理解・習得させるだけでなく、生徒に高いモチベーションを持ってアウトプット活動をさせるにはどうしたらいいかを模索したいと思います。
授業
- Warm-up
- ペアを組み、順番に対義語(例:old-new)のペアを挙げるブレーンストーミングを行う。その後に、教師の言う英語へ対義語を挙手して答える。そのやりとりの中で、Japan-the United Statesという対を引き出す。
- Oral introduction
- 日本において飲酒が以下に受け入れられているかを英語で生徒とのやり取りを引き出す。それと対比しながら、アメリカでの飲酒の扱いを導入する。
- Word list
- 日英のワードリストを見て、暗記タイムで個人で確認。次に、グループごとに教師ができているかどうかをチェックする。
- Listening→Reading
- 花見での飲酒を話題に、日本では飲酒が許容されている理由、アメリカでは許容されていない理由を聞き取らせるために、CDを聞かせる。その次に本文を読ませて確認させる。
- Choral reading
- 主要な単語の読みからはじめ、それをその単語を含むフレーズ単位に拡大して音読練習する。次に、本文の対訳シートを配り、個人レベルで英→日にするsight translationを行う。その後、ペアを組み相手にメッセージを伝えるように、本文の音読をする。さらに、生徒に1文ずつ音読をし、その内容に教師が質問をして答えさせるというQ&Aを行う。
- Retelling
- 本文の概要について、「対比」の論理展開を意識しながらretellingを行う。個人、ペアの順番で行う。
- Jump & Input
- 本文の内容を発展させ、日本に来る海外からの旅行者に向けて、仮想の日本の観光サイトの動画を撮ることを設定する。この動画では、外国人から見て驚くような日本人のジェスチャーや行動・日本食などを紹介することが目的である。マスクの着用、日本人男性がピンクの服を着ることを話題に行った。
みなさんの意見、感想
- 熱く、勇ましく、準備万端で、堂々としたプロの授業だったと思います。素晴らしかったです。また、誇らしかったです。お疲れ様でした。本当に良かったぜ。ガオーーッ!!
- お疲れ様でした!学校で散々プレッシャーをかけてきましたが(笑)、前回見たときよりもほんとに素晴らしくなっていてびっくりしました。討論の部分が訳に集中していましたが、僕は少しの手順のアレンジでグッと良くなると思います。フィードバックにもあった通り、テンポの良さは諸刃の剣だと思うので、語彙指導や意味の把握等、立ち止まる勇気も必要ですよね。Retellまでの展開は本当に鮮やかでした!
- retelling って面白い。
- ビデオを見ていないのですが、目標をはっきりさせ、そこに授業活動をつなげていくと、一貫性が生まれ、ブレがなく、生徒が安心して授業を受けられるのだと思いました。retellingだけでなく、学んだ論理構造を作って自分たちが調べた事を発表するというのも学習効果が高いと思いました。
- 大変、楽しかったです。和田さんのコメント(インテイク、咀嚼の時間も入れる…)が適切だったと思います。私も早野先生のような授業を目指したいです。精読も、おやりになりますか? 全体のバランスの中で、今回のような投げ込み、実に有効だろうと考えます。ありがとうございました。
- 学習者をテンポよく、そして導きたいところが明確に設定されて、受ける側としては「あ~、ここへ連れてきてくれた!」という達成感を持たせてくれる授業で、ある意味自分もこういう授業をしてみたいと感じました。ありがとうございました。
- テンポよく進んでいく授業に圧倒されました。現実の生徒は、単語の発音等、そう簡単には取り入れてくれず、音読練習から四苦八苦しています。最近私がひとつ気付いたことは、先生がmodel reading する回数を絞ったほうが、生徒は自分の声を出す気になるらしいという逆説的状況があるようだという事です。もう少し抑えるともっと生徒の発言を引き出せるかもしれません。どうもありがとうございました。
- アウトプットについて、やはり最後にUSAと日本の違いを(実例があれば)生徒に考えさせ、日本語でも良いからペアーとかでそれを発表させる。その後、その物語を英語にさせる等という活動がとってもcreativeで面白いと思う。それは論理的な考え方、表現をこのテキストで学んだから出来る事だと思うのですが…。
- レポーターの早野さんの感想:テンポが良かったというお言葉をいただいて良かったと思う反面、slow learnerへの配慮と生徒に英文を「しみこませる」時間をもっと取ればよかったと思います。非常にレポートしやすい環境で楽しんでできました。有難うございました。
●日時: |
2014年2月15日(土) 午後3:30~7:00 3:20 ~ 受付開始 3:30 ~ 5:00 中学レポート [担当:棚谷] 5:00 ~ 5:15 休憩 5:15 ~ 6:45 高校レポート [担当:萩原] 6:45 ~ 7:00 アンケート記入・事務連絡 |
●会場: |
★会場がいつもと異なりますのでご注意を! 横浜市技能文化会館 6階603研修室 〒231-8575 横浜市中区万代町2丁目4番地7 TEL 045-681-6551 関内駅徒歩5分 (関内駅南口の改札を出て右へ進んで下さい) より大きな地図で 横浜市技能文化会館 を表示
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●会場費: | 500円(支部会員200円 学生200円) [当日会員登録(年会費2000円)で割引適用] |
●中学実践報告: | 「『モジュール式 英語の基礎』をやってみる」 泉 康夫さん(川崎市立御幸中学校)
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●高校実践報告: |
「アウトプット・大学入試を見据えた、活動的な高校リーディング授業」 早野 香さん(鎌倉学園高校)
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★次回以降の例会予定:神奈川新英研HP
(2014年2月2日掲載/2月27日更新)