■ 山梨新英研「2012年度総会・研究会」

2012年6月
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6月
 6月10日(日)甲府市中央部市民センターにて総会・研究会がひらかれました

Poems with wisdom

 レポーターには小美濃博先生(府中市立第四中学校)を招いて、「Poems with wisdomと自己表現活動&自主教材作りから学ぶこと」と題して実践報告をしていただきました。
 先生の十八番は英詩と自己表現。まずは、アン・ランダースの集めた詩を紹介していただきました。アン・ランダースと言えば悩み相談でお馴染みですが、彼女が紹介する詩はそれだけで悩み相談への回答や生きるヒントに繋がります。参加者が交互に一節一節を音読し、それぞれが納得しながら自分の生き方に重ね合わせていきます。

 たとえば、「Just For Today....」(「今日だけは、、、」)という詩をオリジナルの日本語訳をつけて生徒に提示します。
 ......
Just for today I will not find fault with friends, relatives and colleagues.
 I will not try to change or improve anyone but myself.
......
Just for today I will be unafraid. Especially will I be able to enjoy what is beautiful and believe that as I give to the world, the world will give to me.

 そして、今度は生徒が自分自身の思いをを簡単な英文で表現します。  
Just for today I will make a snowman before snow has melted away.(C)
といったほのぼのしたものから、
Just for today I will feel a cold winter wind and thank for great nature. Just for today I will take care of myself given by my parents.(M)
 
といった中学生とは思えない作品まで、数多くの傑作に参加者は脱帽でした。

 他にも「CLASS」と題された箴言が紹介されました。
Class never runs scared. It is surefooted and confident and it can handle whatever comes along.
Class has a sense of humor. It knows that a good laugh is the best lubricant for oiling the machinery of human relations.
 これに先生は「教室は、恐怖とは無縁のところ。そこには足元がしっかりしていて、自信を与えてくれるところ。いろいろあっても、なんとかなるところ」「教室はユーモアのあふれるところ。笑い声は日々のふれあいに欠かせない潤滑油。みんながそのことを知っている」と、自分のことばで生徒に分かりやすい日本語バージョンを添えています。
 その他紹介しきれませんが、どの「詩」も優しさと人間味にあふれた先生ならではの選択眼がきいたすばらしいものでした。

Another Story of August 6th

NNNドキュメントを見る参加者  後半は、自主教材「Another Story of August 6th」についての実践報告。テレビで放映された「NNNドキュメント」の一番組『原爆の日のプレーボール』を教材化します。
 2011年8月6日に52年ぶりに広島市民球場でプロ野球の試合が行われました。1年前の4月に市の条例が改正され、8月6日の球場使用が可能になり、球団担当者は試合開催実現に向けて努力を重ねます。しかし実現にはいくつも乗り越えなければならない障壁が待ちかまえています。8月6日は「原爆の日」。被爆者を訪ねては、試合実現の思いを伝えますが、その日は鎮魂の日でありどうしても賛同できない人々が担当者を悩ませます。
 最終的には鳴り物の応援は自粛し、試合が行われました。試合前のセレモニーでは広島市出身のピアニストが民家で被爆したピアノを使って鎮魂の曲を演奏。また女優の斉藤とも子さんが詩「8月6日」を朗読しました。
 生徒が一番集中したのは、自分の妻は被爆三世で、娘たちは被爆四世であると自身のブログに公表した広島カープの栗原選手の平和への思いを語る場面でした。
小美濃先生を囲んで  授業では、先生が作成した英文プリントを先生が音読し、生徒はワークシートの設問に答えながら内容を確認していきますが、その前に各野球チームの名前を英語で確認したり、家族に関わる英語を復習させるなど本題へのステップも手抜かりありません。
 小美濃先生のこの実践は広島の中学校へ渡り、生徒の感想などが同じ授業を体験した広島の中学生に届けられました。NNNドキュメントの制作本部にも自主教材プリントと生徒の感想が送られ、心を動かされたスタッフ達によって年末には広島で再編集が行われ新たな番組として放映されるようです。

 英詩と自主教材の実践。小美濃先生の実践に底流しているのはヒューマニズムと確かな知。改めて英語教育のあり方を参加者が問われた実践報告でした。

(2013年12月25日掲載)