■ 神奈川新英研5月春の一日研修会

2012年5月
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2月3月4月5月6月7月9月10月11月12月

●近況報告(当日の参加者+メールでの欠席連絡から)

  • 以前他県で高校教員の経験があるので初任研なしの新採用です。教科の先生方はとてもいい先生なので相談しやすいですが新採担当のOBの先生が威圧的,決め付け型で批判ばかりなので自信を失うばかりなのが悩みです。でも今日参加できてよかったです。
  • 協同学習
  • 大学入試長文を扱った Oral Introduction と Discussion
    4人~6人/1グループでのDiscussion → Presentation
    [ 英のみ / 英日  / 日英  / 日日 からD→Pモード選択]
    幅広い視野を活かしたVocabularyと内容を連動させた"雑学解説"
       [ 英のみ or 英日バイリンガル]
    Reading でlogicを大枠で捉えてからの内容読解。
  • 生徒間のレベル差,意欲差に対してどう対処するか試行錯誤しながら毎日がんばっています。
  • 萩原先生のDVDにありました「ペアで■で隠された文」「retelling」,北原先生の本にありました「60秒クイズ」「BINGO」は生徒が喜んで取り組んでいます。特にretellingは「できない!」と言っていたが,チャレンジしたら「できた!!」で,満足げに「楽しかった」という感想までありました。1~2年の任期の臨任ですが,やらせていただけてありがたいと思いますので勉強させていただいて楽しんで授業をしたいと思っています。
  • 英語部の顧問になり,どのような活動をさせようか模索中です。
  • 3月に卒業生を出し,今年度は担任をはずれました。担任をはずれるとこんなにも授業の準備に時間を割けるのかと改めて感じながら,毎日楽しく授業をしております。
  • 今年もいろいろ勉強したいです。今は来年度に向けての教科書選びに興味があります。みなさんとも情報交換ができるといいです。

●研修会への意見

  • 良い内容だと思います。
  • 望月先生の講演は目から鱗でした。
  • 大変素晴らしいご講演ありがとうございました。

●高校実践報告:「高校英語教科書の内容を定着させるための段階的指導法」

萩原一郎さん(県立城郷高校)
 語研・ELEC同友会・英授研に参加されて培われた幅広い知識,そして生来のバランス感覚を生かされた萩原さんの実践は,四技能獲得を視座に入れ,スモールステップを踏みながら積み上げていくため,レベル差のある生徒に対応でき,他の先生方にも取り組みやすいものになっています。「英語で授業」というプレッシャー(!?)を感じている方は,萩原さんが提案される「高校の授業を変えるヒント」を参考に,retellingやsummary writingから取り組まれると良いでしょう。


萩原さん

  • レポーターから
    教科書の内容や文法を説明し,次に進んでいく授業から教科書の内容を話し,書く力をつけていく授業へ変えていくための方法をワークショップ形式でお伝えします。
  • 萩原さんの思い
    授業の出口に英語を話す,書く活動を取り入れたいという思いが強い。基礎・標準クラスでは「内容が抽象的・量が多いと苦しい」「音読活動にきちんと取り組めない生徒は対応できない」と分かってきた。生徒の到達度に応じて,なだらかなステップで無理なく取り組めるやり方を模索していきたい。

高校の新指導要領

  • 高校における英語指導の問題点:高校教員は授業スタイルを変えない,変えたくないという点で保守的。中高の連携が不十分。生徒の実態に合わない「背伸びした教科書選び」をしがち。
  • 新指導要領で高校英語はどうなるのか? 今までは,「 英語Ⅰ・Ⅱ=単語,読解と文法」「オーラルⅠ=聞く,話す活動」(未だに文法に置きかえている高校も…)という状況。 新指導要領では,「コミュニケーション英語Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ」(上級のテキストは指示文が英語に),「英語表現Ⅰ・Ⅱ」(writingの焼き直し),「英語会話」(教育課程に置く高校が少ないので,聞く・話すの活動が減る→入試を意識)
  • 萩原さんが提案する「高校の授業を変えるヒント」:
    1. まずclassroom Englishの導入から
    2. 高校の英語Ⅰ,Ⅱ,リーディングの授業にもペアワークを取り入れる
    3. 導入にoral introductionを取り入れてみる:準備に時間がかかり,英語力が必要だが,工夫次第。
    4. 授業にもっと音読を!
    5. 日本語訳で終わりではなしに,その先を考える(出口を英語にする)
      ・ speaking…retellingを取り入れる
      ・ writing…summary writing / creative writingを取り入れる
    6. 予習重視から「復習重視」の授業展開へ:
      oral introductionで導入→「従来型の授業形式(英文和訳)」にペアワークを取り入れる→(和訳したあとで意味が分かってから)音読→retellingやwriting

英語Ⅱ

  • 今年度の英語Ⅱの授業手順:教科書Big Dipperの1パートに3時間配当。超スローペースです。前期中間試験はLesson 2のPart 1まで。
    1. 単語シートを使ったペアワーク
      • 単語が読める
      • 日本語→英語言う(難易度があがると,英語→日本語)
      • 日本語→英語言う
      • 日本語→英語書く
      • 授業内で少しやり,あとは自学ノートにすること:チャンクの意識,単語のアクセント,発音,派生語,接辞,辞書引き
    2. 導入
      • oral introduction
      • jumbled sentences
      • brainstorming
      • 導入せずにいきなり教科書を読ませる
    3. 読解(1回目):英語の質問を2つほど用意→答えを見つけるために読ませる
    4. 読解・説明(2回目):基本的にphrase reading。「代名詞がさすもの」「言い換え表現」など,授業ノートに書き込ませる。
    5. 文法・説明:文法事項など,授業ノートに書き込ませる。
    6. 音読
    7. story retelling
    8. summary writing

音読からStory Retelling / Summary Writing活動へ

  • 教科書本文の音読をどのように行うか:英語Ⅱになり,英文の量が増えて難しくなってきたため,教科書本文のsummaryを自分でつくり,それを使って音読練習を徹底することが増える見込み。「空読み」にしないように,音読に徐々に負荷を与え「いつの間にか英語が残っていた」となると理想的。
    • Chorus Reading
    • 教師は日本語,生徒は英語
    • Buzz Reading
    • Pair Reading
    • Overlapping
    • Overlapping(2,3語遅れ)→shadowingにつながる
    • Individual Reading
    • なりきり音読(主人公をIに変換しながら読む)
    • 代名詞変換音読(代名詞を名詞に変換しながら読む))
    • Read and look up(初級編と中級編):マイケル・ウエストさんが提案。
    • Intake Reading(「対面リピート」):斉藤栄二先生の本から。「文単位(あるいはフレーズ単位)で原稿見ないでリピートすると力が伸びますよ」
    • Cloze Reading (Blank Reading)
  • Story Retellingへの3つのステップ
    1. 教科書の音読(文字と音声の一致)
    2. 教科書内容を定着させるための指導
      • Read and look up(初級編と中級編)
      • Intake Reading(「対面リピート」)
      • Cloze Reading (Blank Reading)
      • Q and A
      • その他の負荷をかけた音読活動,暗唱を導く活動
    3. Story Retelling(指さしを励行する):全体練習(Q & Aも効果的)→個別練習→ペアワーク→発表
      昨年度は,発展クラスのみ1学期に数回行った。夏休み中に構想を組み立て直し,9月より標準クラスでも導入。
      1. ① 写真・絵を見て,英文の一部が抜けているものを補いながら話す。生徒の負担を考え,二人で協力して発表する。英文は4~5文程度のサマリーを使う。
      2. ② ①の活動を一人で発表する。
      3. ③ 写真・絵を見て,キーワードを使って説明。最初の一文は与える。生徒の負担を考え,二人で協力して発表する。
      4. ④ ③の活動を一人で発表する。
      5. ⑤ 生徒がオリジナルの英文を加えたりして長く話すことを奨励する。
    4. Summary Writing: story retellingで話せるようになった英語をそのまま書いている,少しずつ段階を上げていく予定。ある課では,Dolphins and horses can help people, too. となるべきところを,* Dolphins and horse is can help people, too.と書いている生徒が10数名を数え,改めて英語を書くことの大切さを実感している。今後は,however, for example, first, secondなどのつなぎ言葉を加えて書くことや,自分の身の丈にあった英語で書くことを奨励していきたい。

ワークショップ

  • 金谷 憲さんの「パラグラフ・チャート方式」(段落ごとの要旨をディスコースマーカーやキーワードで提示した表)に基づいたワークシート(B4版 左): Lesson 1 Everyone Makes Mistakes;: Part 3
    Paragraph 1:間違いを恐れてはいけない
    1. 誰でも間違いはするが,(間違いを恐れてはいけない)。←括弧穴埋め
      その理由【具体例】は,
    2. Sometimes  ときには(    )が助けてくれる。
    3. Other times  ある時には(           )。
    4. Moreover  さらに,間違いから学習する。  以下Paragraph 2,3は省略
  • Summary Writingのワークシート(B4版 右):
    ★教科書の英文で,パラグラフごとに筆者の主張が表れているあなたがもっとも重要だと思う英文の番語を書いてみよう。 Paragraph 1(英文1~4): 1
    Paragraph 2(英文5~10): 5
    Paragraph 3(英文11~15): 12
    ★上で選んだ英文をLook-up Readingで練習したあと,区切りごとに書いてみよう。
    英文1:Everyone makes mistakes, but don't be afraid of making them.
    英文5:Express yourself and show who you are!
    英文12:They are also tools for interacting with people.
    →English and other languages are tools for interacting with people.
    =2カ所修正(代名詞・ディスコースマーカー)して音読すると summaryができる。
    「この英文をつなげると全体のあらすじになるんじゃないかな!」と話す。
  • ワークシート Lesson1 のRetelling(A4版):絵や写真を見ながらキーワードを使って教科書の内容を英語で話してみよう。[1パートと,1レッスン全体の2種類] Paragraph 1:男性の写真+キャプション(an American writer Norman Cousins),   病人の絵+キャプション(became …)   英文の出だし(About fifty years ago, …)  以下Paragraph 2,3は省略
  • ワークシート Lesson 5の単語,音読, Retelling(A4版):
    1. 1)  単語シートを使って:30語程度の単語を取り上げる。1回目「読み」,2回目「日→英」,3回目「日→英」,4回目「試験前に」というチェックボックスつき。 1時間目:音読練習をする。読めたら,一番左のにチェック()を入れる。
      2時間目:用紙を真ん中の点線で折り,ペアで日本語を英語に直しながら言っていく。 言えない単語は「パス」。相手は2番のにチェック()を入れる。
      3時間目:2時間目と同じ。相手は3番のにチェック()を入れる。
      Lesson 5 Dreams Are for Everyone (Part 1)
      1. □□□ one day
      2. □□□ a play
      3. □□□ a deaf person
      4. □□□ deaf people
      5. □□□ sign language
      6. □□□ heroine
         1. □ ある日
      2. □ ★辞書(      )
      3. □ 耳の聞こえない人(単数)
      4. □耳の聞こえない人(複数)
      5. □ 手話
      6. □ ★辞書:女性の主人公
    2. 2) 音読プリント:A4版に教科書の英文が書いてある
      1. Read and Look up:教員がモデルリーディング(スラッシュをつける)→生徒が音読→生徒は顔をあげてもう一度言う
      2. Read and Look up:教員が声をかける「dayまで…,look up」→生徒が言う
      3. ペアで:黙読→相手の胸元(正面)を見て言う
      4. ペアで:インテイクリピート(相手が言ったのを繰り返す)
    3. 3) 音読プリント:A4版を上下で2分割。折り曲げて使用。AとBで同じ英文が書いてあるが,単語8語程度に黒塗りしてある。Aは1段落目,Bは2段落目に黒塗り(★空所にすると書き込みしたがるので,書かせないために黒塗りにしてある! 「前置詞」「動詞を原形にしておく」などレベルをかえる)。AがわからなければBが教えてあげる。
    4. 4) retellingプリント(発展クラス):上半分にキーワードと写真がある。自分で練習。そのあと,ペアで英語を指し示しながら練習。下半分に,summaryとして「話した内容を英語で書いてみよう。できる人はオリジナルの英文を1文つけ加えてみよう」という指示文。書き出しが与えてあり,6行文の下線。
      「ハンナのカバン」の話で,男子生徒が見事にretellingしてくれた。新英研MLに投稿したら,東大付属中高で英文100語の生徒感想文をくれた。レベルが高い!

参考文献


質疑応答+意見交換

  • Q:oral introductionをpart 1のみしているが…(part 2, 3はしていない)。
  • A:Lessonごとが良いが,partごとに「オーラル→定着」のパタン。
  • Q:訳読式を抜け出しつつある。授業スタイルを一貫させたいが,oral introductionを入れたり,しなかったり…。どうですか?
  • A:Yes and noです。oral introductionは好きだが,ワンマンショーになってしまう。例えば,沖縄の内容のときに生徒にチョーク・リレーさせたりした。jumbled sentences(バラバラの文を組み合わせる)という方法もある。
  • Q:他の同僚の先生のやり方は?
  • A:別です。テストは同じ(リスニングなし,アクセント問題,総合問題,和文英訳…)。
  • Q:変な英語を使っている生徒に対しては?
  • A:机間指導。全体で取り上げる(アクセントなど)。「6~8割取ろうよ」というスタンス。あまり気にしないように。
  • Q:教科書のQ&Aの扱いは?
  • A:口頭ではやらず、教科書にあるQ&Aを使っている。最初は質問の答にあたる部分に下線を引かせることからはじめて、徐々に答を自分で書けるようにしていく。
  • Q:p. 2の教員がサマリーを作ってあげるときの注意点は?
  • A:教師用指導書にあるが,easy version(2~3文)で終わっていて,物足りない。基本的に自分で書いている。
  • Q:テストは共通とのことだが,もしも単独ならどうなりますか?
  • A:イラストを提示して「英文を書きなさい」のパタン。総合問題は出さない。
  • Q:定期テストで4技能のどれを重視するか?
  • A:外語大の根岸先生のように問題ごとにラベリングする。中1~3までリスニングがあるのに,高校からなくなってしまいがち。おかしい。
  • 倉本さん:英文テキストGreat Peace Makersには素晴らしい発問がある。「キング牧師は『白人は差別するように教えられたので差別しているだけであって,白人が悪いとは思わない』と言っているが,それをどう思うか」を論じさせている。この発問自体が平和や和解を促進する効果がある(相手の差別の根源に気づかせる)。[会報担当の意見:こういう「発問」が出せる教員になりたいですね!]

参加者の感想

  • 教科書を「使い尽くす」というのが大変効果的な指導法であることを学ばされました。声を出して読んだり,手を動かしたりと「体で覚えさせる」のは良いのでしょうね。
  • 土曜日にしては早起きして来てよかったです。音読活動を早速取り入れたいと思います。
  • 萩原先生のご発表は幾度も見させて頂いています。そのたびごとに新たな視点を与えられることを改めて感じています.
  • 単語シートに例文や語句を取り込まずにどうやって覚えさせるのか?
    下位校しか指導経験がないのに,上位レベルまで網羅して話すのはいかがなものか?
    →大学入試に準拠した指導をしたくなくてもせざるを得ない私学中高一貫校の現状まで目を向けるべき。
    アウトプットで英語を話したり書いたりするのに必要な語彙,文法,背景知識(アウトプットをretellingするまでにどう読ませて本文内容を理解させるのか。)をどうやって身に付けさせるのかが不明瞭。
    「うちの学校の生徒のレベルは低い…」というのは言い訳に過ぎない。どんなレベルにも対応できる引き出し(レパートリー)を増やすべき。
  • 生徒のレベルに応じて工夫をしたり,ペアワークを行ったりと様々な実践を学ばせて頂きました。ありがとうございました。
  • 「すっきり」した授業展開。あれこれ詰め込む私には大きな参考となりました。
  • 技のすばらしさと共に先生のお人柄(間とか声の出し方など)も良い指導法のコツと思いました。
  • Read & Look upを音読指導に取り入れていこうと思います。Story retelling やSummary writingの指導法がとても参考になりました。自分の授業にout put活動が足りないと反省しました。
  • 本日はありがとうございました。生徒が音読などでちょっとずつ負荷をかけ,英語を内在化していくように,教師もある型の授業にちょっとずつ負荷をかけ新たな試みを加えていく中で,自分なりの授業を創り上げていくのかなと考えました。私自身,将来英語の先生となったら,Readingの授業のひな型として,Oral Introduction→ペアワーク→音読→retelling ,writingにトライしていきたいと思っています。
  • 早速,次回の授業から使ってみたい技がたくさんあって,ためになりました。

●中学実践報告:「心と心がつながる授業を目指して」

福島悦子さん(足立区立西新井中学校)
 「英語つまんねぇ,死ね。寄るな。」という生徒の暴言を「福島先生,おはようございます。」と「意訳」(!)していたという辛い状況からいかに脱したのか? 福島さんは,仲間同士をつなぎ,自分と異なる他者・文化を受け入れる寛容さを生徒たちが培えるような授業作りをされて,苦難を乗り越えられました。「阿原先生の秘蔵っ子」(ご本人談)である福島さんには,新英研を通じて培われた技能・胆力があり,そして,おそらく周りにはいつも東京新英研の先輩方の温かいまなざし・サポートがあったことでしょう。この実践報告は,若い教員のみなさんにぜひ参考にしていただきたいと思います。

福島さん

  • レポーターから
    一年生の頃からいじめが多く,人を傷つける言葉が多い学年ですが,言葉である英語の授業で少しでも仲間とつながれる授業ができたらと悪戦苦闘している様子をレポートします。身近にいる仲間とつながれる人は世界中どこに言っても大丈夫!と言い続け,なんとか頑張っています。みなさんから,たくさんアドバイスをいただきたいです。よろしくお願いします。
  • 前任校の様子
    3年前に異動した学校での所属学年が2年生。大人への不信感,仲間同士が信頼できないばらばらな心を抱えていた。福島さんは,生徒の暴言の真意を解釈してはいたが,毎日泣いていた…(やんちゃな生徒からの暴言はまだ良かったが,真面目な生徒から「(前の先生と比べられて)●●先生の方が良かったな」と言われるのがもっと辛かったとのこと)。英語の授業で少しでも仲間同士の距離が縮まるようにと祈るような気持ちで授業作りをし,11月前後から生徒がつながってくれて,My DreamやMy Favorite Thingsなどのスピーチで冬休み前後から変化が見えてきた。(My Dreamの時に,ある生徒がI want to be a doctor.と言ったら「無理無理」という声が上がり,スピーチ中止。次の時間に柔道の先生に座ってもらったら,しーんとした中で出来た! その達成感が次につながった。 ) 2年の終わりには,生徒がかわいくなってきた。ところが3年生では授業のみの担当になり,ガッカリ…。現在は新しい学校で1年を担当。
  • 会報担当・和田から
    「子どもたちにつけさせたい力」として,「自分の使う言葉を大切にする力」「仲間の声を聴く力」「異文化を受け入れる力」「自分を好きになり,仲間を好きになる力」…,「授業で心掛けていること」として,「スピーチ活動をたくさん行い,振り返りを必ず行う」「心に残る豊かな教材を躊躇せずに使う」…,すべて掲載したいくらい,福島さんの熱い思いと英語授業での技術・工夫がレジュメにはつまっていました。機会があれば,福島さんのレジュメ+授業プリントを入手され,お読みいただけたらと思います。

中1の授業

  • 「はじめまして」でスタート
    「阿原先生の秘蔵っ子」なのでAll Englishで(!)授業開き。Let's greet in English with your friends! と呼びかける。英語通信「World」No. 1を配布。以下の挨拶を交わした相手に名前を書いてもらう。
    A: How do you do? I am ~. 
    B: How do you do? I am ~.
    A: Nice to meet you.
    B: Nice to meet you, too.
    A&B  Shake hands with a smile. 笑顔で握手!!←ここ重要
  • 世界のあいさつ
    「World」No. 2は世界地図に吹き出しをつけ,韓国朝鮮語「アンニョンハシムニカ」,ケニアのスワヒリ語「Jambo」など,10言語を記入させる作業。「それぞれの国にそれぞれのすてきな言葉・あいさつ」「言葉の国境を越えてつながる喜び」「Love the world. Love our friends.」「皆さんが世界のたくさんの人々とfriendsになり平和で,本当の意味での豊かなworldを作っていける地球人になって欲しいなと思っています」と福島さんのメッセージが添えられている。
  • 「あいさつSkit Contest」+感想を共有
    「World」No. 3は,必ず行うという「あいさつSkit Contest」。New Crown 1(ムカミがいる旧版が好き!)のHello, Tom. Hi, Kumi. Good morning, Tom. Good morning, Ken.などを久美・健・健のお母さんなど8人分の役割分担をしてグループ発表。「皆に聞こえる大きな声だった?」「ニコニコ相手を見てあいさつをしてた?」「全体の流れはよかった?」「総合得点」をVery good!(5点),Good!(3点),So-so.(1点)で評価。クラスごとに通信を出して,Best 1のグループとメンバー名(名前をローマ字で)を明記+生徒の感想「2班は●●くんの表情も良かったし,全体の流れも良かった。4人しかいないのにちゃんとできていた。」「4班はとにかくおもしろかった! ●●くんが『こんばんは,ムカミ~!』と3回も言っていて笑ってしまいました。」を掲載。
  • その後,5月「ミニスピーチ ALTに自己紹介」,6月「自分の良いところ,仲間の良いところを英語で表現だい」,7月「ミニスピーチ 友達の良いところ」,8月「大Do you like 大会」(クラス全員にインタビュー)などにつなげる。

中3の授業

  • 英語通信で背景説明(福島さんのコメントが光っています)
    1. First Africans were imported to North America in 1619.と題して,奴隷船の実態を紹介。A family of slaves was auctioned.(競売された) Often families were split apart forever (永遠に別れさせられた)when different owners bought other family members.の英文と競売の様子の絵。1963年3月のメンフィスの黒人清掃労働者のデモ行進のI AM A MAN(私は人間だ)のイラスト。
    2. キング牧師の子ども時代のエピソードを,Bob's mom told me to stop playing with Bob.「ボブのお母さんが僕に(   )」のようにして,英文と部分和訳で紹介。「子どもは差別しようとしないけれど,大人が差別を教えようとするんだね」とコメント。
    3. Non-violent Actionと題して,Freedom Ridersを紹介。「長距離バスでのsegregationは禁止されていたが,誰もそんな法律を守っていなかった。そんな状況の中で黒人と白人が協力し合い,フリーダムライダーズとして,同じ席に乗り,長距離バスを乗り継ぎ,旅をした。」 「黒人が乗っているという理由で爆破された直距離バス」の写真。「この事件は全米に報道され,暴力の恐ろしさを知らしめた。」
  • キング牧師のビデオ「知ってるつもり」を見せて
    「このビデオでイチコロ!」だそうで,モントゴメリーの1度目のマーチで,イヌ攻め,水攻めにされる黒人たち,2度目のマーチでキングたちのいる教会の前で警官が「撃てない…」と銃をおろすシーンが見所!
  • ローザ・パークス「勇気の一瞬」を演じる
    「…同じ料金を支払っても,バスの座席に座るのは白人優先でした。そんな間違った社会に対して「間違っている! 正しい社会にしよう!」と行動できる人はほとんどいませんでした。そんな中,ローザ・パークスは,42歳の時にある行動を起こすのです。今日,みなさんが演じるのはローザ・パークスの奇跡の一瞬です。みんな真剣に演じる人たちの気持ちを想像して,一所懸命に演じてください」と呼びかけたプリント。逮捕の瞬間をグループで演じた。
  • キング牧師のスピーチをグループ発表
    7つのパートに分けた。英文は一部省略・書き換えあり。和訳つき。
    1. I have a dream that one day the sons of former slaves and the sons of former slave owners will be able to sit down together at the table of brotherhood.
    2. I have a dream that my four little children will one day live in a nation where they will not be judged by the color of their skin but by the content of their character. I have a dream today. 大喝采
    3. This is our hope, and this is the faith that I go back to the South with.
    4. With this faith, we will be able to work together, to struggle together, to go to jail together, to stand up for freedom together 拍手
    5. So let freedom ring! Let freedom ring from every village and every city.
    6. all of God's children, black men and white men, will be able to join hands and sing
    7. Free at last! Free at last! Thank God Almighty, we are free at last!
  • 学園祭で発表
    台本を中3の先生と2人で考えて,生徒の発案で発表。
  • 生徒の感想その1
    「もしいろいろな権利が私たちから奪われたら…」というアンケートでは他人事で終わってしまっていて,感想が薄かったとのこと。
  • 生徒の感想その2
    ビデオを見て「キング牧師がどのように差別に立ち向かうのかが分かった。決して暴力は使わずに『みんな同じ人間だ』というのを主張し続けたのがすごいと思った。He had great courage.」など。
  • 生徒の感想その3
    キング牧師のスピーチ発表で「聴衆の人たちの反応がとても嬉しかった。共感してくれるのが嬉しかったのは,キングもそうだったと思う。」という感想があり,あれほどスピーチを聞かなかった生徒たちが,よくぞここまでというかんじがした。

参考文献


質疑応答+意見交換

  • Q:今後,キング牧師を扱うので興味深い。「差別はいけない」以外の反応はありますか?
  • A:授業内では「差別はいけない」となるが,実生活でいきているかというと…。単発ではダメだが。道徳の時間で扱ったりしている。地雷を踏んだ少女が自分の足が飛んだときに「痛い」と言う前に「ここに来ちゃダメ」と言った,ということを伝えた。また,アイヌやアボリジニのような先住民を紹介したときに「きたない」という反応。自分とちがうものを受け入れられない。一番きれいなものから見せなくてはいけないということを学んだ。映画『フリーダム・ライターズ』クリックするとAmazonで、該当の書籍のページを開くことが出来ます。を総合の時間で見せたのが,大きかった。Black Eyed PeasのラップのI Have a Dreamを聴かせたら「黒人もかっこいいよね」という声。Free at lastのところでキング牧師の息子さんの記事で「差別がある」というのを残したい。自分もアメリカで(差別を)感じた。
  • Hさん:アメリカの差別を一部分ではなく,今はどうなっているかも扱いたい。
  • Q:荒れていた生徒が変わったのは?
  • A:柔道の先生ですね(笑)。「良くできたよ」とほめてくれた。映画『フリーダム・ライターズ』は1980年代のロサンゼルスで授業を通じて生徒を変えていくという実話。「人間関係で変われるんだ」という感想が多かった。11月にある人に自分が非難され,落ち込んだが,別の人から認める言葉があって嬉しかった。その経験から,生徒を褒めるに限ると感じた。ノートを開いていれば「開いているじゃん」と褒めるようにした。

参加者の感想

  • できる生徒を教えるのは比較的スムーズにいくのかもしれませんが,できない子を教えるのはとても大変だということを知りました。
  • メッセージ性の高い教材が反応が良いということを感じました。
  • ドラマや映画のストーリーになりそうな先生奮闘記でした。うまく翻訳される,打たれ強い先生の頑張りに胸をうたれます。
  • キング牧師と単なる歴史的一場面のみがフォーカスされる教材感に傾くことはなく,未来への歴史を見通し考えていく授業にもスポットを与える必要があるという感想は「あそうか」と一つ考えていく材料が出来たと思いました。
  • 先生の「人を動かすには誉めるに限る」という言葉に心を動かされました。また英語の授業を通してクラスメート同士で認め合ったり,誉め合う活動というのも生徒が英語好きになるきっかけともなると感じました。今日は有難うございました。
  • 英語だけでなく,感動的な内容を伝えられていて感銘を受けました。
  • 本日はありがとうございました。私は学生ですが,大学の授業では授業が成り立つことが前提で理論を習っています。荒れている学校での実践はほとんど聞いたことがなかったので,本日教えて頂いたことは大変貴重なものでした。コミュニケーションができるようになるにはまず人の話を聞くこと,人を認めることから始めなければなと気付かせて頂きました。
  • 超のつく忙しさの中で,生徒達にいかに大事なことを伝えるかのためにいろいろ努力されている姿に,改めて襟を正さなくてはという気持ちです。
  • 授業に対する熱意に感動しました。週26時間,23時間など,川崎では考えられないコマ数でお仕事をされながら,入念な授業準備に本当に頭が下がりました。またご自身が素晴らしい人権意識をお持ちなので生徒に伝える力も大きいと感じました。
  • 英語の授業だけでなく,発表する場を設けることができたことで,生徒のキング牧師の単元理解はしっかりとしてものになったと思います。授業外でもできることがあるのでは?と振り返ることができました。ありがとうございました。
  • 様々な効果的な絵,(投げ込み)読み取り教材,ビデオなどを駆使して,教科書の内容を膨らませ,そして,最終的には発表活動にまで発展させた壮大な取り組み全体が素晴らしいと思いました。暴言を吐く生徒がいるということでしたが,先入観で判断せずに,それぞれの良さを認め合い,お互いを尊重する姿勢を身に付けるには,色々な教科での取り組み,そして学年の先生方みんなで意識的に学年集団を育てていこうとしなくては無理だと思います。黒人の素晴らしいところ?を最初の導入で紹介するとおっしゃっていましたが,その後,どう結びつけていくのかもう少し具体的に伺いたかったです。まず生徒に「黒人」と聞いてイメージすることは?と挙げさせていき,その中で(例え,差別しているような発言が出てきても),今現在彼らが持っているイメージを共有してから,奴隷制度のことやキング牧師に繋げていくと良いのではないかと思いました。バスケットボール選手,陸上選手,ミュージシャン…と活躍している人達はごく限られた一部でしかないと思います。キング牧師以降のアメリカの現状にも触れることも大切だと思います。



●日時: 2012年5月12日(土) 午前9:30~午後5:00

  9:30 ~ 10:00 受付・事務連絡
10:00 ~ 11:30 高校実践報告
11:30 ~ 12:30 昼食
12:30 ~  2:00 中学実践報告
 2:10 ~  2:30 講演
 4:30 ~ 事務連絡・片づけ
 5:15~ 懇親会 (どなたも参加になれます! 当日参加可。)
●会場: 大倉山記念館 第4集会室 (Tel. 045-544-1881)
(東急東横線「大倉山」下車 徒歩5分
改札口を右に出て右折、急坂上る)

より大きな地図で 大倉山記念館までのルート を表示
●会場費  
(資料代含む):
一般2000円、学生500円、
支部会員1000円(研修会当日入会者も割引適用)
●高校実践報告: 「高校英語教科書の内容を定着させるための段階的指導法」
萩原一郎さん(県立城郷高校)
レポーターから:
教科書の内容や文法を説明し、次に進んでいく授業から教科書の内容を話し、書く力をつけていく授業へ変えていくための方法をワークショップ形式でお伝えします。
●中学実践報告: 「心と心がつながる授業を目指して」
福島悦子さん(足立区立西新井中学校)
レポーターから:
一年生の頃からいじめが多く、人を傷つける言葉が多い学年です が、言葉である英語の授業で少しでも仲間とつながれる授業ができたらと悪戦苦闘し ている様子をレポートします。身近にいる仲間とつながれる人は世界中どこに言って も大丈夫!と言い続け、なんとか頑張っています。みなさんから、たくさんアドバイ スをいただきたいです。よろしくお願いします。
●講演: 「英語語彙習得と指導」
望月正道さん(麗澤大学教授)
第二言語語彙習得研究の紹介とそれに基づく効果的な語彙指導についてお話しいただきます。
●お問い合わせ: 萩原一郎 e-mail tel:(045)421-0684(自宅)

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(2012年4月24日掲載/9月29日更新)