■ 神奈川新英研6月例会

2011年6月
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2011年6月18日 大倉山記念館にて 参加者 25名

■最近取り組んでいること

  • 映像と長文を併用して、読む力を伸ばす方法の研究・実践
  • 辞書指導、リズム読み。
  • 中1はペアか3人で練習して発表。できれば自作の作品を暗唱でジェスチャーをつける。中2はジェスチャーをつきでテキスト暗唱。
  • 今年は高2の英作文担当です。いかに説明を簡単にし、outputの時間を作るかに取り組んでいます。
  • 音読中心に取り組んでいます。
  • 4技能からそれを統合させていく中でもう少しBICSを補強したいと思い、それに取り組んでいます。

●授業でうまくいかないこと、悩んでいること

  • 英語が苦手で本文や単語を写すこともしたくないという生徒への動機付け。
  • output(特に低学年における)
  • 高3のリーディングにおいて、いかに本文を読んで覚えさせるか? 本日教えていただいた方法も少し入れてみようかと考え中。
  • 中1だとまだ名前を書けない、スペリングをおぼえられない子、中2で1年の文法をマスターできていない生徒をどうフォローしていくか悩んでいます。
  • 限られた時間の中でいかに効果的な授業が出来るか。本文の量が多く、訳読に時間がかかる。共通試験がゆえに目的が試験対策になってしまいがち。日本語の訳に生徒が頼ってしまう。
  • 教えすぎない授業を心掛けていますが、なかなか切り捨てる部分が難しいです。
  • 「英語文化理解」という選択科目を担当しており、教材研究に追われるマイ位置である。教科書を使わない授業をデザインする大変さを痛感している。

●神奈川新英研事務局への意見

  • 初参加にもかかわらず、ご親切にありがとうございました。

●高校実践報告: 『英語授業の新しい進め方―英文法落語論
          ―英文法は落語である!!』

水口(みなぐち)俊介さん(日本大学中学校・高等学校)
水口俊介さん  オペラ歌手のような声量と美声で「一語読みと言っても『果物』ではありません…」と一語一語をバラバラに音読させ、「一気読みと言っても『お酒』ではありません…」と一気に読み下させる。水口先生の「立て板に水」のトークに圧倒されているうちに、あっという間に英文が言えるようになる。それは研究会や研修に千回参加するという「千日行」を自らに課し、やり遂げたからこそ、お出来になることなのでしょう。そして、今回の提言2「英文法落語論」で文法項目の特徴に合わせて英文法の指導法をアレンジ。これなら、トークに自信がなく、パワフルでない方でも追実践できそうです。みなさんも参考になさってください。

(1)水口先生

  • 今回は英語の授業の進め方と英文法の授業の進め方について新しい提言をし、それに基づいて模擬授業を行います。特に、英文法の授業・進め方に関して新しい提言『英文法は落語である!!―英文法落語論』をここに発表します。英文法の授業に興味を持たれている先生方は必見・必聞です!
    1. 提言1 新しい英語授業の進め方を考える
      提言2 新しい英文法授業の進め方を考えるー英文法落語論
    2. ワークショップ1「英文法の授業はこのようにー英文法授業の進め方」
    3. ワークショップ2「中学・高校の英語授業はこのようにー英語授業の進め方」
  • 事務局から:水口さんは1959年生まれ。日本大学文理学部大学院博士前期課程。江川泰一郎氏に師事。専門は、英文法理論(学習英文法・意味論・認知言語学)、英文法指導論。新しい言語理論に基づく英文法理論・指導法を開発中。『マスターコース文法・語法演習』『シニアコース文法・語法演習』『クローバー英文法・語法ランダム演習 入試発展編』『クローバー英文法・語法ランダム演習 入試標準編』など著書・論文等多数。学会・研究会での発表も多数。
  • 英文法というと「解説ばかりになってしまう」「20代の頃、仮定法過去と仮定法過去完了が分からなくなって生徒に訊いたことがある(笑)」「やっていて空しくなってしまう」。今年のお正月、愛犬の散歩中に「英文法落語論」を思いつき、家に急いでパソコンに入力したそうです。
  • 朝の7時半にという補習「早起き君」をしている(以前に「夜更かし君」という夕方の補習をしたら3人しか来なかったのでやめた)。
  • 水口先生の考え:教科書を理解させるのが目的。読み書きそろばんと同じ。授業が分かる、テストで点数が取れる、自信がつく、参考書『Dual Scope』を読んでみたい、教科書を読めない人は受験はできない。
  • 英語研究歴:野球部顧問をしていた。結婚して27歳の時に家でのんびりテレビを見ていたら京都のお坊さんが千日修行をやっていた。奥さんが「あなたもやったら?」と言ったのでカチンときて、研修会に出始めた。1000回を42歳で達成した! オールイングリッシュにあこがれていた。オリジナルを求め始めたのが40歳過ぎ。影山式授業と認知言語学にたどり着いた。このお正月にまとまった。
  • 水口先生の教え子だった方によると「生徒ができるようになるように命をかけています、と水口先生はおっしゃっていて、本当にそういう方です。あるとき、順番通りにプリントをしなかったら、別室に呼ばれて、その通りにやらないと困りますと、泣いて言われたことがある」

(2)提言1 英文法落語論

  • 英文法落語論(英文法の授業の進め方を3分類)の観点:どのスタイルで英文法の授業を行うか、複数のスタイルはどう組み合わせるか、複数のスタイルはどの順番で行うか。
a)「古典落語型」actor
  • 教科書や参考書をそのまま使う。『WILL総合英語』(美誠社 1,400円)は「板書」がそのまま書いてある(!)ので、その通りにできる。
    例)受動態の導入で
    Many people speak English in Kenya.
    English is spoken by many people in Kenya.
    「主語がMany peopleですね。動詞がspeak。能動態ですね。ではEnglishを主語にしてね、受動態を作ろう! たすきがけにしてね。S(主語)+be動詞+過去分詞+by ~.じゃぁ、受動態を作ろう…」
  • 長所:誰にでもできる。教師も生徒も楽。大きな学校では教員同士で同じことをshareできる。生徒はこの授業スタイルだと予習・復習ができる。
    短所1:単調になる。「一日に3回もするの…」と、教師も悲しくなってくる。
    短所2:教員の技量によって変わってしまう。授業の展開力(発問の仕方や間の取り方)で違ってしまう。生徒は内容を本当に理解しているのだろうか。
b)「新古典落語型」arranger
  • 落語で江戸の長屋を現代のマンションに置き換えたりするように、順序を変えたり、内容を短く凝縮したり、途中でやめてしまったりする。
  • 例1)関係代名詞の「和訳の仕方」「who, whichの使い分け」を5分で説明!
    1. I know a student (      ) studies Russian.
    2. The boy (      ) is wearing a T-shirt is Bob.
    3. Dr. Jones is a scholar (      ) many people respect.
    4. Jim works for a company (      ) makes computers.
    5. This is the model plane (      ) my father made.
    「1~5を見てご覧。どの関係代名詞が入るか分からなくても良いけれど、必ずカッコの左には名詞が来るよ。仮に、名詞をAとしよう。Aはa student, the boyだね。『なになにするA』と訳せるよ、やってみよう。3は『Many peopleがrespectするa scholar』だから、『たくさんの人が尊敬する学者』、4は『makes computersするa company』だから、『コンピュータを作っている会社』。全部、関係代名詞がわからなくても和訳の仕方は同じだね。」「さて、a studentやa scholarは『人』だね。人が来て、関係代名詞が来て、動詞が来たらwho。Is wearingは動詞、the boyは人だね。だからwho。ひとつ置いて動詞だったらwhom。物が来て関係代名詞が来て、動詞が来たらwhichだよ!」(ここまでで5分!)「じゃぁ、参考書を読んでみよう…」(というと、読んでくる生徒が増える!)
  • 例2)プラスワン(plus one)理論で「完了不定詞」「完了分詞」「完了動名詞」を説明する方法!
    1. It seems that he was ill.
      = He seems ( have ) ( been ) ill.
    2. My father is proud that he was a policeman.
      = My father is proud of ( having ) ( been ) a policeman.
    3. Because he had failed the test, he decided to take it again.
      = ( Having ) ( failed ) the test, he decided to take it again.
  • 「had+過去分詞=3、過去形=2,現在形=1とする。もしも、1つずれていたら「~だった」「~した」なので、to have過去分詞、having過去分詞にするというのがプラスワン(plus one)理論。例文の2番ではisが1、wasが2で、1つずれがあるね。ofのうしろはingだね。だからhaving been。3番ではhad failedが3、decidedが2で、1つずれがあるね。Having failedになる。」
  • 長所:スピーディーでわかりやすい。
    短所:その場限りの理論でアドホック。教員同士で共有しにくい(「水口だけ、面白いことやっている」と言われかねない)。田尻吾郎さんの文法書は新古典落語型。
c)「新作落語型」creator
実際は生徒たちは何年もかけて文法規則(スキーマ)を見つけていく。中学で「新作型」、高校では「古典型」でやっている。
  • とらわれずに新しい理論を取り入れる。
  • 長所:生徒が参加する。解説はないに等しい。この方法は関係代名詞や不定詞など「構造が簡単なもの」、あるいは、仮定法のように「構造が難しくとも意味が簡単なもの」をピンポイントでするのに向いている。表裏一体!)
    短所:生徒は予習できない。文法内容によっては効果がない場合がある。
  • クラッシェンのinput理論:たくさん入れると学習者は獲得し、それが出てくる。水口さんは「基本的に正しいけれど…。」と考えている。
  • 認知言語学:言語の使用により習得する。自ら見つけた文法獲得(スキーマ抽出。規則発見)、言語を使用する頻度(frequency)で定着(entrenchment)
    →文法の授業でターゲットになる文法項目の代表的な例文(プロトタイプ:個々の基本例)をいくつも書かせたり音読させたりしてインプットし、そこから文法の規則性(スキーマ:文法規則)を生徒自身にみいださせていくと、自分で使えるようになる(拡張表現)。この循環で文法を獲得する。
  • 例1)受動態
    「この時点では受動態とは説明しない」「一語読み、一気読みで音読」
    English is spoken by many people in Kenya. 
    English is spoken by many people in ( ).
    French is spoken by many people in ( ).
    Japanese is spoken by many people in ( ).
    規則:S be spoken by ~.
    与える語彙:Japan, Canada, China, Australia
  • 水口さん「共通点は何?」
    生徒「is」
    水口さん「read、これは何? 現在形、過去形それとも過去分詞?」
    生徒「過去分詞」
    水口さん「be+過去分詞で『~される』」
    (formとmeaningを説明)
    1. English is spoken by many people in Canada.
    2. English is used by many people around the world.
    3. This book is written by my father.
    4. This book is read by many people.
    規則:S be 過去分詞 by ~.

(3)提言2

  • 鍵穴式授業(授業の進め方)=5~10分の作業がどんどん進んでいく。
  • 長所:説明を20分聞いて問題をやってみようと言われても、途中で分からなくなると生徒は分からないが、5分刻みだと「復活」できる。また空白の時間がない(ので生徒が騒ぐ暇がないので教員も助かる)。
    教師はマニュアルを持っているから楽!(たまに生徒も持っているけれど…)。自分のペースで試験範囲を終わらせたいときに向いている。生徒も安心(当てられないから)。最初の1~2週間はこれでやると生徒は安心する。
  • 短所:悪い点は「生徒がやっていないことがある」。そこで指名を「順番式」「アットランダム」に行い、「2回やったよ」と言われるが、生徒に恐怖(!)を味わわせることができる。

●不定詞(中学)
  • New Horizon 1(東京書籍) Program 6-2 不定詞の副詞用法(目的)
  • 導入
    1) 26秒 刹那Warm Up(3分前に廊下に立っている。チャイムと同時に入室。規律と礼で26秒。チャイムの鳴り終わるときにやんちゃ坊主も座って書いている。) 板書で以下のように書いておく。3文は後半を書かないで、後で書く。
    I went there to play baseball.
    I went there  
    I went there  
    I went there 
    2)「I went there to play baseball.を3回言った人から座って!」「鉛筆もって『先取り君』やって、スタート」(5分)、やっている間に「文法確認ちゃん」を配布する、という流れ。
    1. 先取り君(単語型):No.1は縦横6×5=30の単語、その下に6×5で和訳、6×5で薄く書かれたなぞり書き用、6×5の空欄。No. 2は6×5で和訳、6×5で薄く書かれたなぞり書き用、6×5の空欄。No. 2は6×5で和訳、6×10の空欄。No.4で小テスト5分、24問正解で合格。左ページに6×5で和訳、6×10の空欄。下線7本+右側に「先取り君練習ノート」として6×20の空欄。
    2. 文法確認ちゃん(文法型):Program 6-2(不定詞の副詞用法:目的)の4つイラスト抜粋+walk our dog, have lunch, wash my dog, play baseballも記入。 I went there to study English.  私は英語を勉強するためにそこに行きました。 1. 私は犬を散歩させるためにそこに行きました。 分からない生徒のために板書はある。「どうしてもという人は黒板を見ていいよ。」と指示。「一語読み」「一気読み」をする。「4つの文に共通するところは? Toのあとに動詞だ。原形だ。to+Vで『Vするために』だね。」 文法確認ちゃんのI went there (下線).の4文に記入させる。パタンプラクティス3題は『準拠問題集』抜粋。(後日行う、小テストはおなじない用で7文を3分。)
    3. 『準拠問題集』の該当部分を配布=「古典落語型」。 1問目は先ほどやった問題なので、出来ない生徒も書ける。5分間で問3まで出来る。「残りは宿題ね」と言っても、家で10分でできる。「質問した人には答えてあげるからね」と話す。このような『準拠問題集』は生徒に丸投げすると出来ないが、「英作君と文子さん」をやっているからすぐ出来る。
    4. リスニング:ほとんどが参考書の例文。同じ11の例文を形式を変えて。
      Ex. 1(11問)カッコ以外の英文を読みます。カッコに適切な関係代名詞を書きなさい。
      Ex. 2(11問)英文を1度読みます。カッコに適切な語句を書きなさい(カッコは2~3ある)。
      Ex. 3(11問)日本語を読みます。英語にしなさい。
      Ex. 4(11問)次の関係代名詞を用いて自由に英文を作りなさい。(これは宿題にする。他の英文を写しても良い、としている)
  • 展開
    1) 英作君と文子さん(1枚のプリントに4つの活動)
    1. なぞり式listening:全員参加できる5分の活動。プリントの教科書本文の薄い文字を読みながらなぞる。生徒がなぞっている間に先生は3回音読する。水口さんによると「脳科学の川島裕太さんのパクリ?? 介護士をしている奥さんから、認知症のおじいさん達は『ぽっぽっぽっ はとぽっぽっ』と文字をなぞると歌い出すのよ、と教えてもらったのがヒント」。
    2. 和訳(和訳先渡し):「そのまま鉛筆を持ちなさい。訳してみよう。わからなければそのままにしなさい。全部分からなくてもいいんだよ。わからなかったら『先取り君』に載っているからね。」と指示。生徒は日本語が部分的にある下線部に和訳を書く。先生は3回音読する。
    3. 写々丸君(暗写):「本文を写してみよう。みんなは神奈川でいちばん写しているかもしれないぞ~。先生が音読している間に写しなさい」(できる生徒はすでにここで暗記できている)。
    4. Dictation or Dictranslation:「本文を聞きとってみよう。英文を見ないぞ、でも、見てもいいぞ」と指示。全員が参加できる。仕上げにCDを聞かせる。外国人が言ったのが聞き取れたよ、となる。
    2) 本文読み(5~10分の音読):音読を組み合わせる。

●関係代名詞(高校)
・ 関係代名詞プリント(本日授業分):例文は構造がわかるように縦線が入っている。who, whom, whichの位置が縦に揃っている。
  1. 1. I know a student who studies Russian. a. I know a student ( ) studies hard. b. I know a student ( ) ( ) French. 「3回言えたら座って!」と、指示してプリント配布。 「僕は知っているよ、ロシア語を学んでいる生徒を」と先生が言う。 a, b を日本語でいいから言わせる。「僕は知っているよ、一所懸命勉強している生徒を」。そのあと「一語読み」「一気読み」(毎セットで繰り返す)
  2. 2. The boy who is wearing a T-shirt is Bob. a. The girl ( ) is playing tennis is Lucy. b. The man ( ) ( ) running there is Ben. 「Tシャツを着ている生徒はボブだよ」と先生が言う。 a, b を日本語でいいから言わせる。言えなかったら3秒待って、別の生徒に言わせてから、言えなかった生徒に戻って言わせる。
  3. 3. Dr. Jones is a scholar whom many people respect.
    a. Dr. Jones is a scholar ( ) many people love.
    b. Dr. Jones is a scholar ( ) many people ( ).
    「ジョーンズ博士は多くの人が尊敬する学者だ」と先生が言う。Bの空欄には好きな動詞を入れさせる(knowなど)。
    1. I know a student who studies Russian.
    2. The boy who is wearing a T-shirt is Bob.
    3. Dr. Jones is a scholar whom many people respect.
スキーマ A(人)+who+V
     A(人)+whom+SV
   和訳  (Sが)VするA
「whoとwhomで、右側との決定的は違いは? 動詞がきているかきていないか、だね。一個おいて動詞がきていたらwhom。」 ここまでで5分! ここで「新古典」を5分入れても良い。参考書は例文を頭に入れておけば読める。
以下に4, 5でwhichを提示(例示は省略)。「人と物とどっちが大事? 人だね!(よかった…) 人の代名詞はいっぱいあるが、物の代名詞はitとtheyだけ。」「じゃぁ関係代名詞の省略を教えてあげようか。A+関係詞+SV。動詞が来ないときでwhom, which。SVAって言えたら省略できるよ(Many people respect the scholar.のように)。この中ではどれ? 3番だね。4と5では? 5番だね。じゃぁ、SVAって言えるね。」(新古典を使っている…)
ここでクラッシェンのinput理論に戻る。獲得できていない生徒もいるかもしれないのでモニターする。
新古典(例文をインプット)から古典(参考書を読む)に入るのがよい。学校英語は形から入ってしまう傾向があるがfunctionalism(機能主義)がよい。

●他
  • 音読のヴァリエーション:学年が上がると4~7をする。
    1. Chorus reading
      a) 「一語読み」=先生と生徒がEnglish, English, is, is…のように一語ずつ読んでいく音読法。
      b) 「一気読み」=先生がEnglish is spoken…のように一文読んで、生徒も一文ずつ読んでいく音読法。(一般的なモデルリーディングです)
    2. 「追っかけ読み」(shadowing)
    3. 「ペコちゃん読み」(手をたたいてRead and Look Up)
    4. 「スピード読み」(buzz readingの変型。先生が読むから時間計って。17秒。では、みんなは25秒で読んで…)。ここまでで15回以上は読んでいる。
    5. 「リレー読み」(テキスト見ながらの場合と暗記の場合〈15秒〉の2パタン。聞いていないと恥ずかしいので、良く聞いている。1人ずつ列ごとに行い、間違ったら1番に戻る)
    6. 「ペンキ読み」(A3の紙に書き、黒く塗りつぶして読む)
    7. 「ちゃんぽん読み」(日本語を交ぜる)
  • 和訳のヴァリエーション:
    1. 英文和訳
    2. 順番方式
    3. At Random方式
    4. 穴埋め方式:和訳にカッコが空いている。何でもカッコにすれば良いのではなく、斎藤栄二さんの実験によると「名詞」「動詞」「新出語」を抜くと良いとのこと。形容詞や副詞はカッコで抜くとダメ。
    5. 訳順序並べかえ方式:文の順番を( )→( )→( )→…に番号で書く。生徒は日本文から英文を探し出す傾向があり、英文を読んでいるかわからない。
    6. 混合方式:「穴埋め方式」「訳順序並べかえ方式」を合わせたが、英文を読みながらやっているとムカムカしてきてしまう。雑味が出てきてしまう! マンネリになったら入れている。
  • 出題のヴァリエーション:「新作落語型」をするにはQ&A、TorFは必要。
    1. Q&A:コミュニケーション活動へつなげるためにもQ&Aは必要。
      例)Not many years ago, some American farmers began to complain about hawks.(鷹について文句を言い始めた)で始まる11行ぐらい英文で、「鷹を殺したらネズミが増え、自然のバランスが失われた」という話。
      a) Finding Facts:英文に書いてあることは正しいかどうかを読み取る
      1. What did some American farmers begin to complain about? など6問。
      b) Making Inference:なぜなんだろう、と読み取る
      1. Why did some American farmers begin to complain about hawks? など5問。
      c) Personal Involvement:読者の個人的感想「鷹がかわいそう」など。
      1. Do you like hawks? Why? / Why not?
      2. Do you think the balance of nature is important? Why? / Why not?
      3. If you were a county official, what would you do?
    2. TorF:生徒はこれだけだと和訳をほしがる。
    3. 総合形式としてのDictranslation:本文の6文が抜けていて、下にその6つの英文が全部与えてある。和訳は9文全部与えてあり、文の順番を( )→( )→( )→…に番号で書く。 生徒は写すだけ。できない生徒も参加できる。
  • リスニングのヴァリエーション:
    1. 「拾い聞き」
      a) 順序指定:「Did you have a nice flight?のうしろから2番目を答えて」「nice」
      b) 文法指定:「Have you ever ~? 主語を答えて」「you」
    2. 「Q&A聞き」「T or F聞き」
    3. 「間違い探し聞き」:間違い文は定着しては困るので慎重に扱っている。

(4)質疑応答

  • Q:右側がexerciseのプリントは口頭で答え合わせの後はどうするか?
  • A:口頭5分、解答欄を配って書かせるのが5分。
  • Q:韓国に留学していたときに自分はパタンプラクティスの授業で身につけた。英語1で同じように出来ない…。
  • A:今日のやり方は中3まで。高1からは精読。できるときは「新作落語型」にして、「古典落語型」を使い分ける。かなり書く。
  • Q:予習の指示は?
  • A:特にしない。
  • Q:ペアワークは?
  • A:得意じゃないですね~。
  • Q:Q&Aの作り方の視点は?
  • A:斉藤栄二 『英文和訳から直読直解への指導』 研究社、1996を参考に。
  • ・英語科では好きなプリントを作って良いが、コンピュータのサーバー上にすべて出しておくことになっている。

(5)参加者の感想

  • Hawksの長文をFinding Facts, Making InferenceそしてPersonal Involvementの3段階で使うのがいい。後半で使った教科書準拠問題集のExercisesを書かせて答えさせるのではなく、口頭で答えさせるのがおもしろい。そのあとの5分で答えを記入させるというのもさらにおもしろい。列で読ませるということは20年以上やってこなかったが。「見て読む→見ないで読む→リレー読み→1~8まで番号を振り当てて読ませる」といった練習は授業を大変盛り上げることができると思った。
  • 音読(音声指導)から文字指導への足がかりが見えたように思います。
  • 同僚の方:理論に基づく流れが美しいです。この流れは崩したくない、といいますか、崩したらグダグダになった。この流れをベースにもっと話し方や見せ方を勉強したいと思います。英語の勉強も…。
  • 同僚の方:水口先生のお話を聞くたび、気持ちを新しく持たせてもらっています。本を読んでもなかなかしっかり理解して実践につなげることが出来ないのですが、先生のお話を聞いて、光が見えてきました。勉強して良い授業が作れるようにしたいと思います。
  • 同僚の方:繰り返し暗示的に指導することによって、Targetとなる事項を「教えられている」と意識せずに内容を刷り込ませていく点が非常に参考になった。文法事項を指導する際に様々な方法を探求していたので、非常に参考になった。
  • 教育実習中の学生の方:今日は水口先生の講演に参加できて良かったです。3週間の研修でやっていたことが、はっきりしました。もっとコーラスリーディングやread and look upや文法事項の説明がもっとうまく出来るように努力していきたいです。本当にありがとうございました。また先生の講演会にぜひ参加したいです。
  • 文法項目を単純に簡潔に教えられていて、特に鍵穴式はとても参考になりました。
  • 学生の方:とても参考になりました。「生徒に遊びの時間を作らせない」授業展開、教師になった際には私もそうした授業を展開したいと思います。今回、研究会に初めて参加させて頂いたのですが、水口先生の授業展開に驚き、方法次第でこんなに楽しく英文法を指導できるということを実感しました。こうした指導法は様々な生徒(レベルや家庭環境など)がいる公立で展開することは可能なのでしょうか? 
  • Q&Aの仕方の工夫が見られ、とても参考になりました。特にpersonal Involvementの質問を設定するのは面白いと思いました。パワフルな授業が印象的でした。
  • 「自分のスタイルをベースに部品を替えて指導法を確立していく」という考えに共感しました。私の大きな課題に「テンポ・メリハリがない」というのがあったのですが、今日の水口先生の展開の流れを参考にしたいと思いました。
  • 5分でこんなにいろいろなことが出来、50分でこれだけのことが出来るとは感動でした。少しでも生徒たちに英文を聞かせ覚えられるようにしたいです。文法は自分が苦手だったので、テキパキと教えられないのですが、例文から入るのは楽しいので私に出来るやり方を見つけたいです。自分がトロトロしてしまわないで、子どもに次々課題を与えてあげたいです。質問を作って配ってあげると、難しい英文も読めて分かるようになるのだと感心しました。良い質問を作るのが難しいと思いました。
  • いつも水口先生からはアイディアをいただいております。今日のお話もしっかり咀嚼して、自分の授業に生かしていきたいと思います。ありがとうございました。
  • 文法の教え方に行き詰まっていたので本当に目から鱗でした。いかに理解して使えるように生徒に伝えられるか、自分なりに考えてやっていきたいと思います。英作君と文子さん、やってみたいなと思います。
  • 今回はスピード感のあるすばらしい授業を拝見させていただきましてありがとうございます。5分刻みで展開されていて、内容も深く考えられていて、すべて計算されていらっしゃる素晴らしさを深く感じました。古典落語、新作落語など、自分の授業を客観的に考えることが出来ました。ありがとうございます。
  • 理論に基づいて、徹底的に音読や筆写をしてからスキームに気づかせ、古典型で締めくくるという、目の覚める活動であっという間の3時間半でした。勇気をもって、様々なアイディアを生かしたいです。
  • 人生をかけて教えていらっしゃることがよく伝わってきました。もっと水口先生から学びたいです。大学教育でどの部分を生かせるかゆっくり&確実に考えたいです。ReadingのQ&Aのテクニック、使いたいです。

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(2011年6月13日掲載/9月7日更新)