■ 群馬新英研4月例会

2010年4月
<< '05年'06年'07年'08年'09年'10年'11年'12年'13年'14年 >>
4月5月6月9月10月11月
 4月25日(日)。9人が参加しました。

4月例会


Driving Miss Daisy

使用しているテキスト
 はじめの30分ほど、しばらく「暗転」のまま止まっていた講読『Driving Miss Daisy』の照明を点けて芝居を進行させました。
 Daisyの息子Boolieの家で催されるクリスマス・パーティーへ向かう車の中、DaisyとHokeの会話。Daisyは、嫁のFlorineが社交好きの上、クリスマスといって家中を派手に飾り付けるのがお気に召さないようです。
 Boolieの家に着いて車のドアを開けるHokeに小さな茶色の紙包みを差し出すDaisy
…"This isn't a Christmas present."
さて、紙包みの中身は? … 5月例会のお楽しみにして本日はここまで!

メイン・レポート

 4月例会のメイン・レポートは桐生西高校・大貫正雄先生(化学担当)の『引率教師のニュージーランド訪問体験ルポ』です。
 2年生女子8人+引率教師2人は2010年3月19日(金)に日本を発ち、ニュージランドへ。翌20日(土)、ホストファミリーとご対面、緊張の一瞬。みんなひとりずつ別れていく、不安な瞬間でもあります・・・「いったい何を話しかけたらいいのだろう? 何を話しかけられるのだろう?」
 みんなを見送って最後に大貫さんのホストRonai君(15歳)が現れる。引率教師は現地姉妹校の先生のお宅にホームステイすることが一般的だが、大貫さんのホストファミリーは生徒の家庭。お父さんのMr. Reddyは日本の自動車産業で働いていたことがあり、今は自動車修理工場に勤めている。一家はフィジー諸島から移民してきたインド人の9人家族(Ronai君、両親、祖母、叔母、小学生の妹・弟、幼い弟、赤ちゃんの弟)。日常会話は母語(ヒンズー語?)と英語のちゃんぽん。Ronai君は日本語を学び始めている。
 夕食は毎日カレー。(大貫さんにとってはこれが最大の悩み?!だったとか)2日目からは手で食べることに挑戦。おばあちゃんが「もっと食べろ食べろ」で断りきれない。ラムのチップ、チキンカレー、魚(サバ)カレー、さまざまな香辛料、ライス、ナン、なす、きゅうり、バナナ、リンゴ、オレンジ、スイカにインディアン・ティー。とにかく盛りだくさんで、常備薬「ジャヌビア」を祈るような気持ちで飲み続けたそうだ。帰国後、体重は+2.8㎏!血糖値やHb-A1cはどうなっていただろうか?「食べることはつながること」という歓迎スタイルなわけだが、けっこうつらかったと率直な感想も。
 22日(月)に姉妹校Papatoetoe高校訪問。マオリ伝統の踊りHAKA(ラグビー代表チーム・オールブラックスが試合前にやるので有名)で歓迎を受ける。歓迎会の最後は「ホーンギ」(鼻をくっつけあっての挨拶)を全員で、でもちょっと恥ずかしい。校内見学で目にした11年生の数学は「複素数」。a = 4 - i / b = 3 + 2i / a + b = ? など。
 24日(水)の「オークランド市内バス観光」を挿んで、23日(火)と25日(木)はホストの生徒と一緒に授業を受ける。(いろいろな授業の紹介がありましたが、11年生の歴史の授業のところを引用させてもらいます。)
 担当は、Freeman先生です。黒板(実際には白いボード)には、
1965 – 1966 Turning point in the civil rights movement
 とあります。授業の始めに、5分間、古いフィルムが流されます。
  「あっ! キング牧師だ。演説している。テロップは追いきれませんが、大きな集
 会での演説です。超・超有名な演説"I Have a Dream."かもしれない。」
  続いて、デモ行進の場面が出てきて、何やら周りの警官みたいなのともめている。
 さらにジョンソン米大統領が画面に登場して、署名している。
  生徒に配布されているプリントの表題には、
    Selma to Montgomery March  
 とあります。(大貫さんの資料にコピーが付けられています。欲しい方にはお分けいたします。)

 私はFreeman先生のところへ向かいます。電子辞書の"公民権運動"の部分を見せます。彼は「Yes.」と答えます。
 そして、テキストを貸してくれました。早速、生徒たちが開けているページを読んでみます。「batons, tears gas, disobey, mocking」などの言葉が目に飛び込みます。急進派が、"キング牧師は腰抜けだ"とあざける文章も出てきます。この部分が"公民権運動;The civil rights movement"であることは確実です。
 そこで、テキストのいちばん前のほうを眺めてみます。白人と黒人のバスの座席や待合所などが分けられている場面の写真と説明があります。
 真ん中あたりでは、プロボクシングヘビー級チャンピオン、モハメド・アリのイラストがあり、"彼がなぜカシアス・クレイという名前を捨てたのかまたはベトナム徴兵拒否のこと"なども書かれています。
 さらに、最後のほうのページをめくると、アメリカ連邦最高裁判所の役割が載せられています。Affirmative actionの話題が出ていて、それにより黒人の就ける仕事の種類が大幅に増え、議員の数が急上昇していることも取り上げています。
 これらの記述を見つけるために5分間、私は「英語を英語のままで飲み込む、飲み込もうとする」という経験をしました。英語を日本語に訳さず、ひたすら読み進む。私にとっては、人生で、はじめてのことです。ちょっとした驚きです。
  
 大貫さんは翌日の夕食会でFreeman先生と、人種差別、民族差別、日本の在日朝鮮人、アイヌ、部落差別などの問題で意見交換もしたそうです。Freeman先生は北海道で1年間ALTをしていたり、神戸で3年間ほど生活していたことがある方でした。

 勉強家の大貫さんは、帰国後2つのことを調べています。『席を立たなかったクローデット』(渋谷弘子訳)と『I Have a Dreamブックレビュー M. L. キングを縦横に知る!』(室井美雅子・清泉女学院大学)です。後者からこんな言葉を紹介しています…
  "Rosa sat, so Martin could walk, so Obama could run, so our children can fly."
 大統領選挙の際に聞かれたフレーズで、Tシャツまで作られたと。

 大貫さんの専門は理科(化学)。最終日26日(金)の授業参加は、13年生の生物「遺伝子クローニング」。宿題のプリントは「ポリメラーゼ連鎖反応法」と「電気泳動法」についてだそうです。新英研のメンバーには「むずかしい」だろうと心遣いをいただき、英語の教材プリントに日本の教科書のコピーをつけてくれましたが……??? ゴメンナサイ!

 Reddy家のことや食事のことは先ほど紹介しましたが、ホストファミリーでのエピソードも大貫さんらしい「好奇心」に溢れていました。
 片道25分かけて、Ronai君とふたりで歩いての登下校を実行。朝は簡単な会話でも話が弾みます。下校時にはK-mart(大きなスーパーマーケット)で道草。夕食で"まいった"と言っていたのに、フィッシュ&チップスやレモン&パエロア(炭酸飲料)の買い食い。柄の悪い生徒たちがいると、ふたりであわてて隠れたりと、「私の気分は、ホームステイの引率ではなくて、ホームステイの少年そのものです。」
 「上毛カルタ・英語版」や「小学校理科3・4年生用教科書」で、群馬の風土・文化や日本の自然のことをRonai君に伝えたり、彼の科学のノートを見せてもらって、ほぼ日本の中学生・高校生と同じ内容を勉強していると確認することも忘れていません。
 23日の晩、フィジー系インド人がReddy家に集まってきての聖書・読書会や悩み事相談会にも参加。初めは英語で
"It is difficult to forgive another people."
"Seven enough?"
"Seventy-seven enough?"
などと始まりますが、話し合いはヒンズー語(?)でまったくちんぷんかんぷん。軽食を食べ、お茶を飲みながら午後10時までの会合で、毎週火曜日にはほとんど行われているそうです。
 26日の夜にはインディアンクリスチャンセンターの集会にも参加しています。ステージ上のドラム・エレキギター・ベースギター・キーボードの演奏にあわせて2時間ほど歌いっぱなし。(アメリカ南部の教会で黒人たちがゴスペルを歌い続ける姿を連想してしまいました。)
 大貫さんは次のように推測しています・・・
 「フィジー系インド人は、ニュージーランドの中では少数派でしょう。彼らは精神的にも実生活の上でもつながり・連帯を求めている。キリスト教がその役割を果たしているのではないか?地縁・血縁が消えつつあり、地域という言葉も死語になりつつある日本と異質なものを感じます。」

(まとめ文責:加藤彰男)

Amazon.co.jpアソシエイトサーチ:

(2010年11月23日更新)