新英語教育研究会 第46回 全国大会(東京大会)
TOP > 現地だより > 4

現地だより4

<< PREV NEXT >>

「英語教育の原点と未来を語る」シンポジウム開催
  ―新英研創立50周年によせて−
    瀧口 優

 

 8月1日大会初日、今年は例年の記念講演に代わってシンポジウムが開催されます。題して「日本の英語教育の原点と未来を語る」です。ただしタイトルはまだ確定ではありませんが、内容的には反映しています。シンポジウムの参加予定者を紹介します。
 柴田義松氏(東京大学名誉教授)。今世界でもっとも注目されている心理学者ビゴツキーの研究家で『思考と言語』の翻訳など、その業績は素晴らしいものがあります。外国語教育としての英語教育についてご意見を伺います。
 キップ・ケイツ氏(鳥取大学教授)。カナダ出身、イギリスのレディング大学で応用言語学の修士号を取得し、鳥取大学には1985年に赴任。グローバル教育や国際問題、あるいは外国語教育について深い造詣があり、新英研でもブロック集会などで講演しています。
 江利川春雄氏(和歌山大学教授)。最新刊『日本人は英語をどう学んできたか』では日本の英語教育を明治時代から分析し、新英研のブロック集会をはじめ、各地において日本の英語教育について積極的な提言を行っています。今もっとも期待されている英語教育の研究者の一人です。

シンポジウムの概要

 シンポジウム内容についてはこれから検討されますが、基本的には以下の3点を明らかにしたいと思っています。
 まず第1に日本の外国語教育としての英語教育の歴史と、その中での新英語教育研究会の果した役割を明らかにすることです。英語教育の歴史については大枠でとらえたいと思います。
 第2として、現在混迷している英語教育の何が問題でその原因は何なのか、またどのような方向で進むべきなのかを明らかにすることです。新英研がすすめてきた学力や教材、あるいは自己表現や学習集団の取り組み、あるいは平和・環境教育などがどのような位置にあるのかを学びます。
 第3として、これから新たな半世紀の一歩を踏み出す新英研として、理論的・実践的に何が求められるのかを明らかにすることです。社会が変化しその中で子どもたちの発達が変化していることを理解し、今何が求められているのか考えます。
 シンポジウムの冒頭に新英研の50年を踏まえて瀧口が基調報告を行い、それをもとにして議論することになります。

外国語教育の偶然と必然

 文部科学省やその背景にいる人々はその政治的な力を背景に日本の教育を「人材育成」や「効率化」の下請けにしようとしてきました。その結果が「競争主義」であり「成果主義」です。決して一人一人の人格形成を考えることはありません。こうした動きに対して外国語教育を通して民主的な人格形成を目指してきたのが新英研です。  折りしも小学校の学習指導要領が移行期に入り、「外国語活動」が全国の小学校で始まることになります。担任が英語を教えるという無謀な施策を受けて小学校現場では混乱が生じています。また中学校の指導要領も移行期に入ります。高校の指導要領は1年遅れになりますが、大会までには告示されます。既に教育条件の改善もなく「英語で授業をすること」が指導要領には盛り込まれています。  教育行政が実践的な展望を失っているこの時期に、こうしたシンポジウムが新英研50周年の名の下に開催されることは歴史の偶然です。この偶然を必然にすべく大いに議論を行いたいと思います。ぜひ全国からの参加をお待ちしています。
<< PREV NEXT >>

このページは、雑誌「新英語教育 2009年4月号」の「現地だより」から、転載をしたものです。
「シンポジスト変更について」
 シンポジストのお一人として予定をしていたキップ・ケイツ氏(鳥取大学教授)がご都合で参加できなくなり、その替わりにやはり国際理解教育を専門とされておられる松井ケティ氏(清泉女子大学教授)が参加されることになりました。
▲このページの先頭へ