■ 2009年中国・四国ブロック集会

2009年1月
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 今年は1月11日(日)に1日で実施しました。会場は岡山の就実中・高校。参加県は、広島、山口、高知、愛媛、京都、岡山でした。

新英研講座


是恒先生

 「中学入門期の授業づくり」と題して、参加者同士のコミュニケーションを取り入れながらのお話でした。
  最初、岩崎先生が、二人一組になって、じゃんけんをして自己紹介をし、その後握手をしながらのゲームで会場の雰囲気はとても暖かくなりました。その後は中学入門期における文字カードを使いゲームのように展開されるワークショップ形式のお話に笑いが絶えない時間でした。また、多感な生徒に対する答え方の言葉遣いや、歌を使っての単語力アップや文法項目の理解のさせ方などは、現場からしか出てこない知恵だと思いました。
  しかし、このような表面的な作業だけでなく、「人間としての発達に必要な心を耕すこと」もしっかりと見せてくれました。
  また、最近問題となってきている特別支援教育を要する子どもに、どう教えればいいのかという手だてがとても役に立ちました。例えば「dogと書いてdの前に髭を書いて犬の頭、gの後ろに尻尾を書いてdog」というように、視覚的に教えるなどもとても参考になりました。
 午後からは、まず岡山新英研会長小川先生から昨年10月16日に満99歳で亡くなられた長谷川清先生を偲んでの弔辞が述べられ参加者一同が長谷川先生のご冥福をお祈りしました。2年前まで岡山新英研の例会に参加され、「英語の音象徴」について私論を展開されていたお姿を思い出しました。

報告


京都の山口先生

「『平和・人権』を音読・暗誦・スピーチ・劇で学んだ3年間〜サダコ、アレン、キング、ハンナのかばん」
 同志社中学校の民主的な組織作り(校長などの選挙制や週1回の職員会議のあり方)や在校生の実態を話されると、その環境のよさに目がいき参加者からはため息が漏れましたが、人間教育という点では他校と同じように、この社会の有様に翻弄されている家族・生徒像が浮かび上がってきました。
 3年計画で実施された実践を詳細に報告することはできませんが、1999年から行われてきた3年時におけるアレン・ネルソン氏の講演会や、1年次から『「ことばは人と人をつなぐもの」〜外国語を学ぶことで、自分の世界を広げ、自分をよく知ろう!〜』という英語科教育目標を柱に教育実践してきました。
 2年次では"Landmines and Children"を勉強してMy Dreamをスピーチにして発表。英語劇"Pot of Poison"を4人1組で発表。"Sadako and the Thousand Paper Cranes" (New Crown L4)を繰り返し読んで暗誦。さらに深めるためにThe Sadako Storyを読み、NHK特集「サダコ-ヒロシマの少女と20世紀」を鑑賞し、夏休みにサダコ・ヒロシマ・ナガサキに関する記事を集めて、2学期に壁新聞の制作を行いました。3年次ではキング牧師の生涯と彼の演説を学び英語劇を演じたり、キング牧師の1963年のスピーチ"I Have a Dream."を暗誦し唱和発表を3学期に行いました。
 また、3年次の人権行事の日、11月9日にはアレンさんを迎えて講演会をし、その後アレンさんの"To End the Misery of War~ No Reconciliation, No Peace~"を読み、最初のMessage to the Studentsは内容読み取りの後暗誦。
 そして、その後の「ハンナのかばん」の学習もそうですが、一貫して生徒の成長を学校全体で考え、それを具体的に授業で実践していく姿には、学校を超えて共通するものがありました。さらに、そのことを通して先生方も変革され、勉強することの意味は「学習を深めれば誰しも変化・発展する」ということが実感されました。

簗田先生

 最後は、山口県からより『「えっ!生徒が翻訳出版?写真パネル展も開催?」〜バングラディッシュを学び広めようとした生徒の物語〜』と題して発表がありました。簗田先生は現在までに、Chaplin映画"The Great Dictator"の「世紀の6分間スピーチ」を生徒に暗誦させたり、生徒が集めた顔写真6000枚を使って、あのアウシュビッツ強制収容所に一時抑留されていたアンネ・フランクの姿や、「死の門」のシルエットを創作させました。意識的にいろんな学校に勤務しながらも、「人権・平和」という視点で、ポーランド国立アウシュビッツ博物館へ「ピース・メッセージ」を送りました。また、2003年に「サダコ像」の右腕が切断されたときにも、「折鶴」と「ピース・メッセージ」を送りました。"Child Labor in Asia"では、バングラディッシュの児童労働の問題を扱いました。
 日韓共同開催のワールドカップで使用されたサッカーボールの多くが、過酷な児童労働よって作られたことは日本ではあまり知られていません。また、バングラディッシュでボランティアとして活動された20歳のスイス人が書かれた"Why cannot a dream become a reality?"の翻訳と出版。そして、巨大廃船解体の実態を英語で紹介した本の翻訳と出版となりました。前者は宇部校生160人がかかわりましたが、後者は下関商業生、下関南校生、下関西校生3校による合作となりました。進学校、総合高校、職業高校とカリキュラムや使用教科書が違い、それぞれの生徒の目標も違う中で学ぶ者が主体となっていくためには何ができるかというこの実践は、学校という枠を超えながらも、「英語を学ぶ意味」を教えたいという先生の願いそしてその冷静な計画と粘り強い実践に教育の基本を感じました。今回の翻訳出版に到達したことで学校の先生の枠を抜け出して「市民教育者」としての立ち位置が確立されたのではないでしょうか。



 3人のレポートにはそれぞれ学ぶところが多く、「3冊の重厚な書物を読んだようだ。」と言われた参加者の言葉が、この集会のまとめとなっていると思います。初めての1日開催でしたが、レポーターの方々の用意周到な準備とその内容の深さに感銘した集会でした。今後の課題としては、各県の日常的な活動をいかに継続させ、学習の場を保証するかということだと考えます。2ケ月に1回の例会活動をどんなにかやり遂げていきたいと思います。

(2010年11月29日)

日 時: 2009年1月11日(日)11:00から18:00まで
会 場:
就実中学・高校(1号館4階 視聴覚教室)
 岡山市弓之町14-23
 Tel:086-225-1326 Fax:086-232-8203
内 容:
新英研講座:
「中学入門期の授業づくり」(広島 能美中学校 是恒 真澄氏)
報告:
  1. 「『平和・人権』を音読・暗誦・スピーチ・劇で学んだ3年間〜サダコ、アレン、キング、ハンナのかばん」
    (京都・同志社中学の山口良子氏)
  2. 「えっ!生徒が翻訳出版?写真パネル展も開催?」〜バングラディッシュを学び広めようとした生徒の物語〜
    (山口・下関商業高等学校 梁田 芳樹氏)
費用・資料代: 1,000円
連絡先: 太田芳治

(2009年12月14日更新)