■ 東海ブロック集会

2002年

2002年 東海ブロック研究集会


 参加者は合計42名(参加費を払った人)で宿泊者は30名。参加者の県別の内訳は愛知8名、岐阜4名、三重3名、静岡27名です。

記念講演

 記念講演は掛川工業高校の英語教師で作家の渥美二郎氏(「民主文学」新人賞受賞)で、重度の障害をもった兄の話から始まって中学・高校時代の自分のつぱっりと非行、1年浪人して工業高校に入って、予備校で知り合った女性が受験する大学に入りたくて英語を猛勉強して合格したが失恋、卒業して教師になった体験談はとても面白くみんなを話しに引き付けました。彼は新英研への入会を確約してくれました。

実践報告

 実践報告も内容がバラエティに富んでいて、すぐれたものが多くありました。報告のほとんどを英語でしたり、部分的に英語を使って報告された方も2〜3名あり、当ブロックとしては初めてでした。また高専と大学(私ですが)の授業実践も発表されたことも新しいことでした。

愛知県レポート発表

愛知県レポート|岐阜県レポート静岡県レポート
(1) Letting them write--- Writing の授業での試行錯誤 高校 桑原徹
  1. 学校の現状
    普通科3クラス→最底辺
    ・ 退学者が続出 ・ 大変な生活指導 ・ 教科書レベルが生徒の実態に合っていない
    食物調理科
    生活デザイン科
  2. Writingの授業の全般
    ・3年文系クラス→週6時間を担当
    ・インターネット1時間→オーストラリアの中学とe-mail(頓挫)→「WORD」のコンピュータの使い方※生徒にFDを買わせる
    ・ 第1・3土曜日は映画
  3. GEM Poems(五行詩)
    ・ 生徒に「詩人になろう」と
    ・ パターンに沿って書く→プリントにして配布
    ・ 生徒は「詩」にはまった
  4. Name Poems
    ・ 自己表現的に8行で。
    ・ Wordでレイアウトして製作
  5. I AM Poems
    ・ 「もの」になりきって書く
    ・ その作品を褒めちぎる
  6. Haiku
    ・ 今度は俳句を作ろう
    ・ 伊藤園の英語俳句コンテストで1人の生徒が5万円もらう
  7. その他
    ・ 英字新聞づくり(ALTの協力を得て)
(2) 平和への思い 〜3年生全体が取り組んだピースメッセージ〜 中学校 近藤直子
 3年2クラス、1年3クラス、週22時間担当。荒れた2年生を必死で立て直し立派な3年になるのに教科担任を外され、抗議して 2クラスもらう。
9月のテロ事件、ALTのサミュエルが泣きながら話して生徒たちも感動。各自平和への思いを英語で書くというピースメッセージを作る。
まず見本を見せて、日本語で書いて英語に直す作業をする。添削は近藤とサミュエルがする。それが大変だった。ピースメッセージを文化祭で展示したが保護者が英語アレルギーで見ないので、がっかりした。
2クラスしか持っていないので、他の先生も了解してくれてALTと共同で全学年でやれた。
メールで山形の管さんのサイトから例文を拾って見せた。低学力の生徒も力一杯やった。次第に英語が好きになったと言う。
メールの有効な利用、ALTとの共同作業、平和への思い、プリクラも活用。
日本語で考え、英語で考えて2回考える。よく深められたと思う。英語が好きになれば、学ぶ意欲につながる。

(3) 生き方を考える英語教育を目指して 岡崎矢作中 三浦照代
 教研のレポートは義務で出し、発表時間は3分。それでも新英研の実践内容を知らせたくて(新任の中で10人が英語)作った。従って4目的も入れた。
小学校から中学校へ替わったとき、蒲郡大会があり、その時にABC替え歌を覚える。
フォニックスの活用、ローマ字から、one,one,oneのnursery rhythm の訳を絵。2年で不定詞を教えて A Child's Wish をやる、ユニセフで買った絵も活用。
Mother's Lullaby の文を受動態に変える。後で習ってから戻る。
岡崎市統一テストがあるので、教科書を進めなければならない。プラスする形で投げ込み教材。
教科書は全て分担してパターンプラクティス教材を作らせられる。印刷して全教員に配る。

岐阜県レポート発表

愛知県レポート|岐阜県レポート|静岡県レポート
(1) 大学での読解指導の試み 日本福祉大学 安藤富雄
杉原千畝のこと
  • 昨年「新しい歴史教科書」問題に「杉原千畝」出る、「ユダヤ人を救った」
  • 小林よしのり「ゴーマニズム宣言 戦争論」に「ユダヤ人は第2次世界大戦中に日本人によって2万人もの命を救われたのにオッペンハイマーなどのユダヤ人研究者が原爆を作った」
  • 「2万人」はどこから?→樋口喜一郎将軍(関東軍)が救った。
  • 「国民の歴史」樋口将軍、満ソ国境にユダヤ人が来たときに、東条英機の指示で特別列車を出し、ユダヤ人(実際は100人→18人)を救った。
  • 日本の軍部が人道的であったことを宣伝するために「2万人」にした。
  • 杉原も「八紘一宇」の精神に従っただけ。
  • Hollywood でも杉原を描いた映画・脚本を制作中(幸子夫人も関わる)
お願い
  • 原作『決断、命のビザ』(大正出版)の英訳を出したい、新英研の先生で下訳の協力をお願いできないか。
  • 2000年7月29日、アメリカからの帰国途中、杉原千畝のビザに救われた女性(シルビア・スモーラー)が飛行機に同乗していた。「自分が堂脱出したかの手記を出したい、日本語に翻訳して欲しい」→安藤先生に依頼。28000語の大部分訳したが大変(ヨーロッパの地名・人名の読み方など)協力を
  • 今の日本の戦争肯定の雰囲気の中で正しい杉原像を
レポート
  • 第7分科会「遅れがちな子をどう生き生きさせるか」に一貫して関わる
  • 高校退職後、日本福祉大に。2年間非常勤の後、「遅れがちな子を教えた経験を活かして欲しい」と頼まれ、教授に。
  • 入学生の4割は英語の試験なしで入学→中学英語も分かっていない
  • 3年前、学生アンケート→ 一番イヤな教科が英語。
  • ↑何とかして欲しい。「Presentation を英語でできる学生を」、とても無理、せめて英語でmail が読めるように読解力を付けたい。
  • 新英研の実践を応用したい。枝村先生と1年間実践。以下資料参照。
質疑応答
Q:版権の問題は?
→200〜300語なら黙って使ってよいのでは? ほとんどがCosmosからで、私が関わっているから三友社から出版予定。高校でも使えるように。
Q:コピーして使って良いか?
→どうぞ。
Q:最も印象に残った教材にChaplin が入っていないのは?
→時期の関係。
Q:『オリバー』についてもっと詳しく
→Penguin から出ている、兄が障害を持っている人の話、とても感動的。

静岡県レポート発表

愛知県レポート岐阜県レポート|静岡県レポート
(1) 人権と平和 小川中学 五条博子
  • 授業ではALT もJTE も日本語と英語を使うようにしている→誰でも間違いをするのだということを生徒に知らせるため。
  • ゲーム Tell me the way ….(warm-up activity)
    背中にメッセージが書かれた紙を貼られ、それを英語やジェスチャーで伝える。How did you feel? と聞いて、何が書いてあるか考えさせる。
  • 「独裁者」を冬休みに全員に見るように、宿題として感想を書かせる。冬休み明けに「アンネの日記」を学ぶ予定だったので。
  • 道徳の時間=英語の時間
    →自分なりに年間計画、「レーナ・マリア」「アンネの日記」「キング牧師」などを扱う。
  • 異文化の理解
    ハロウィン→カボチャをくり抜き、ジャコランタンを作って持っていく(結構喜ぶ)。パンプキンパイを作っていく。
    クリスマス→キリスト誕生の寸劇。教会を模して賛美歌をオルガンで演奏する。
  • 英語映画→聞き取り=常に自分の英語力を今が最高の状態にしておくため、それを授業に投げ込む。文法などが出てくるとそれも合わせて取りあげる。
  • A message to Korea←「新しい歴史教科書」を読んで、「日本人は何をしたか知る権利がある」
    スピーチコンテストへ参加させる。最初の発音を録音しておくと、その変化(上達ぶり)が分かる。正確で聞き取りやすい発音の追求。
  •  Reasons to be Angry
    空欄を埋めさせ、何に使われているか考えさせる。それは税金でまかなわれていると知らせる。
  • キング牧師 差別問題
    「知ってるつもり」の番組を27分に編集し、写真などと合わせて見せる。「差別」と「当然」にカードを分けさせる。
※ 道徳は何も与えず、いたずらに葛藤させるのではいけない。何かを与え、何がよく、何が悪いかを一緒に考えるべき。
(2) 高専における教育実践 沼津高専 山岸文明
沼津高専
 5人の英語教師、6人の講師、4人のALT 。生徒は英・独・仏から選択できる。
単位数:1年6単位、2年5単位(検定教科書)、3年4単位、4年2単位、5年2単位(教科書は担任裁量)。
5年生は大学の3年生に編入することができる。大学進学の生徒が増えている。
TOEIC
 就職時に高専の生徒に何点取れたか聞かれる。480点以下の時は再度ウケさせる。学習ソフトをパソコンに入れて勉強させる。問題集を使って授業でも勉強している(カセットなどがついている教室用と自宅用がある)。
映画の活用
 キング牧師、チャップリンなどのビデオや映画を見せる。自分でスピーチを作らせて、カセットに録音させて評価する。キング牧師のスピーチを聴いての感想を書かせる。
※学習の仕方を身につけさせる。感動する教材を使う。

 最後に現地の事務局がとても hospitableで、おいしい地酒がふんだんに振る舞われ、交流会が大いに盛り上がったことを付け加えておきます。

 (東海ブロック全国常任委員 安藤 富雄)


日 時: 2002年1月5日(土)〜6日(日)
会 場:
ル・ヴェールたちばな
静岡市緑町10-30 電話054-246-7272
内 容:
記念講演
  • 渥美二郎先生「元ヤンキー教師の英語学習法」(静岡)
実践報告
  • 太田寛先生「自己表現を試みて」(三重)
  • 桑原徹先生「高校英語の様々な授業実践:映画・俳句」(愛知)
  • 近藤先生「平和への思い:ピースメッセージの取り組み」
  • 安藤先生「大学での読解指導試み」(岐阜)
  • 五条先生「人権と平和」(静岡)
  • 山岸先生「高専における授業実践」
費 用:
  • 参加費 1,000円
  • 宿泊費 9,000円
申し込み: 粕谷たか子
枝村泰代あてメールでも結構ですので是非が参加の連絡を下さい。28日までご参加をお待ちしています。