■ 2002年中国・四国ブロック集会

2002年1月
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 1月5,6日の2日間にわたり、岡山市内で開催しました。参加人数は40名(宿泊者35名)という1997年の徳島につぐ参加人数となりました。今年の夏には山口県で全国大会が開催されるので期待がもたれます。順を追って報告します。

1日目

 1日目は高校、中学校から各1本ずつのレポート発表してもらい時間をかけて討議することにしました。

レポート1 広島、可部高校 坂野文恵先生
「つまずいている生徒をいかに生き生きさせるか」

 個性豊かな、明るい元気の良い生徒ではあるが、勉強意欲の面では乏しく、授業に積極的に取り組もうとしない。そこで、プリントを用いての授業形態に切り替えた。
 プリントを作成するとき、知識を詰め込むのではなく、生徒一人ひとりが考え、少しづつ理解しながら学習していけるように留意した。生徒に何をすればよいかを知らせることがやる気を起こさせる結果につながった。クラスの平均点も著しく上昇したのでさらに個人の目標を定めさせ、それに近づくよう励ました。
 プリント学習ではやる気を起こさせるために、芸能人の写真をコピーして貼ったり、生徒自身にも自由に絵などを英文に描き添えたりさせた。また生徒一人ひとりの個性を尊重するためにアインシュタインの言葉、"Imagination is more important than knowledge."を引用したり、プリント学習では「プリントを大切にし、頑張って取り組んだ」ことで、表彰状を作成したり、シールを色々作って活用したり、小テストの得点をアメリカ一周のすごろく地図に書き入れさせたりと様々な方法なども取り入れている。
 授業の初めに毎時間小テストを実施し先生自らが採点し、コメントを書いたり、シールを貼って生徒を励ました。生徒の学習活動に変化を持たせるためにいろんな教材を与えた。特にジョン・レノンの"Imagine"では、その歌詞に先生自身が学生時代に勇気づけられた話しを生徒にし、感動を呼んだ。また、クリスマス・カードを書かせることも、生徒の創造力を育てる上ですばらしい教材といえるでしょう。

 先生の若さあふれる、エネルギッシュな授業に生徒は引き込まれ、学習に熱心に取り組む様子がよく伝わって来ます。教師主導型でありながら生徒の積極的な参加を引き出し、成績の上昇にも貢献した授業レポートでした。

(報告者:岡山の目瀬・依田)

レポート2 徳島県、富田中学校 松島先生
「自己表現で楽しい授業を」

 『自己表現で楽しい授業を』が徳島の松島佳代先生のレポートのタイトルだった。
 教職3年目の若い先生にもかかわらず、もう何年も経験しているかのような内容の濃いレポートであった。授業での取り組みの数々から、先生の熱心なご様子がうかがい知れる気がした。

 レポートの中から具体的な授業の取り組み"SHOW AND TELL"について。文字通り自分の宝物をクラスの前で紹介するのである。自分のことを自分の言葉で級友に語る。簡単なことのようであるが、自分のことを話すことが苦手な子供達が増えている現状において、この活動はとても重要性をもつ。

 次に自分の名前を英語で紹介する活動である。この活動は自分の名前を知る良いチャンスになると思う。そして、この活動を通して、説明することの大切さ、自分の名前が「親からの思い」を託されたものだということ、漢字を通して日本式命名文化の違いなどいろいろなものが学べる。

 "レッツほめまくり"というお互いをほめて、それをlook形容詞や look like 名詞を使って表現してみるおもしろい実践例もあった。時制の区別は英語の学習にとって特に大切であるが、松島先生は現在・過去・未来の3つの時制を使って詩を書く自己表現の授業を展開されていた。「自己表現」と一言でいっても、「ただ新らしく習った文法を使って表現するだけでは自己表現といえないのではないか。」という意見がでた。
 確かに、ただペラペラと内容のないことを話す人より、ゆっくりではあるが自分の意志を表現する人の方にネイティブは興味深く耳を傾ける。他の人を存在があるからこそ、自己が存在する。実は「自己表現」というのは、単に思っていることを言ったり書いたりするだけでは「自己表現」にはならないという指摘であろう。
 つまりこの「自己表現」は人格形成に関わってくる大切な人間活動になるということ。だからこそ、「自己表現」はとても大切だということに再度気づきました。

 そして何よりも松島先生が生徒とのかかわりを"生徒からの贈り物"ととらえ、日々実践されていることが、実に立派だと思いました。たくさんのオリジナルワークシートを心待ちにしている生徒の笑顔が想像できるようなレポートであった。

(報告:岡山の秋山・秋田)

2日目

 2日目は、瀧口先生をお迎えして、昨年の山口集会で問題提起れた「総合的な学習の時間における国際理解で実践されている小学校の英語会話について」講演とその後質疑応答&討議をしました。

 初めに「BSディベート」で放送された番組の前半を視聴した。
 その後、瀧口先生が「小学校の英語・英会話を考える」と題されたレジメにそって小学校の指導要領に示されている「総合的な学習の時間」の
  1. 取り扱い、
  2. ねらい、そして
  3. ねらいをふまえて・・・
  4. 名称のこと
  5. 配慮事項
とふだんだんと今回のトピックス「英語会話」の分野について話しをすすめられました。文部科学省がだした「指導要領」を丹念に読むことによって現場の混乱がはっきりと見えてくると確信しました。

 それにしても指導要領の中では、「国際理解に関する学習の一環としての外国語会話・・・」と書かれていて、「英語会話」とは明示されていませんが、文部科学省初等中等教育局中学校課・高等学校課に所属する元教科調査官、加納幹男氏に、「総合的な学習の時間」に行われる「国際理解学習の一環としての外国語会話等」の活動は何を目的にしているのか、そしてどのような活動が望まれるのかについて、小学校英語のQ&Aを読んでいくと、「外国語会話」という言葉がだんだんと「英語会話」に帰結していき、日本の中学校では英語、高校でも外国語となっているが、ほとんど英語を教えているので小学校の外国語も英語でいいのではないかという結論になっています。
 このことは、「小学校英語活動実践の手引き作成協力者会議」(座長:影浦 功 宮崎大学)が作成した「小学校英語活動実践の手引き」でも、「外国語会話」から「英会話学習」、「英語活動」そして「身近な英語」という表記になっていました。

 つまり「聞き・話す」英語が英語によるコミュニケーションとなり、小学校の国語の指導要領にもまず「話す・聞く」がきて、それから「読む・書く」という順番に成っているそうです。「まずコミュニケーション」という観点から「聞き、話す」と理解させようとしていますが、「コミュニケーションの本質」を考えると、その浅い認識には耳を疑いたくります。
 このことに対して立教大学教授の鳥飼玖美子氏も警鐘を鳴らす発言を「日本人にとって英語とは何かシンポジウム」でなされていました。

 その後、現在日本の小学校でどれくらい英語会話の授業がなされているのかについて、全国(1500校)と岡山県(約200校)のアンケート結果が岡山新英研から発表されました。岡山のある小学校では、研究指定校として小学校1年生から国語の授業を1時間削って英語会話を取り入れているところがあるという報告がありました。
 また徳島のある私立小学校では1年生から週2時間の英語会話を実施しているところもあるということです。
 親の期待感。国の「英語を第2公用語」にという議論の推進、などをみてもこれからどんどん小が校に「国際理解に名を借りた英語会話」の授業が実施されていくことと思われます。教育整備はなされず、現場はますます混乱をすることになるでしょう。

 中国・四国ブロックでは今後も「小学校の英語会話」に注目して、ひきつづき議論を深めていくことを決議しました。新英研としても今後小学校、中学校の連携という点で無視することのできない話題になると思われます。

(2002年2月17日)


日 時: 2002年1月5日(土)13:30 〜 6日(日)12:00閉会
会 場: 「津島苑」
岡山市津島新野1-1-22
Tel:086-252-1331
テーマ: 「共に学び、共に育つ英語共育を」
内 容:
  • 5日 中学・高校からの実践報告
  • 6日 記念講演:
    「小学校の総合的な学習の時間における英語会話について」
    瀧口優氏(新英研中央常任委員・白梅短期大学)
    <岡山県の実態調査(2001年10月)・全国の調査(2001年1月)も公表>
宿泊費: 1泊2食10,000円(1泊2食税サ込み、資料代・参加費込み
参加費 : 1,000円(1日)、1,500円(両日)

(2001年12月16日)